ワタクシ、ガラにもなく沖縄の原風景を楽しもうと思いまして、石垣島を離れて竹富島に足を伸ばしております。せっかく八重山諸島まで来たのですから観光も楽しまねば、です。
石垣島からは、竹富島行きのフェリーが1時間に1本程度就航しており、所要時間は15分ほど。これは行かない手はありません。
ちなみに、石垣島には近隣の島々とを結ぶ大きなターミナルがあり、4本8面ある桟橋から西表島や波照間島、小浜島など多方面へのフェリーが絶えず離着岸しております。ひっきりなしにフェリーが出入りする光景は圧巻です。
竹富島へ行く際は、離島ターミナルの券売機にて入島券(300円)を購入して桟橋へと進みますが、平日だというのに結構な人出がありました。さすが竹富島は人気がありますなぁ。目の前のフェリーは瞬く間に満員となり、即座に出船!
でも、すぐに2隻目が着岸して残りの客を収容していきます。よほど人気のある航路なのでしょう、同時刻の複数便にも慌てる様子はありません。
ワタクシが乗り込んだフェリーも、ほどなく満席状態となって出航。コバルトブルーの海原を滑るように進んであっという間に竹富島に到着しました。港にはレンタサイクル店のワゴン車が数台待機しており、ほとんどの観光客がそれに乗り込みます。
実は、この島にはレンタカーが存在しておらず、観光の足はレンタサイクルがメインとなります。島の集落までは歩いても10分ほどですが、送迎のサービスがあるんですな。
ワタクシもお邪魔して…と思いましたが、その前にチョイと竿を出してみようかなと。晩酌の肴くらいはサクッと釣れるでしょう、たぶん…。
★見える熱帯魚とマジの攻防!
港内の広々とした岸壁には、ルアーを投げている釣り人がポツンといる程度。まあ、観光地としてはともかく、釣り場としては無名ですからねぇ。
とりあえず広く探れそうな岸壁の角に陣取って仕掛けを投げ入れますが、思いのほか反応がありません。こ、これは…、沖縄の離島にありがちな日が暮れないと港内の浅場に魚が入ってこないパターンかも…。
ならば岸壁に居着いている魚を狙おうと、足下に寄せエサをパラリと撒いてみます。おおっ、いるいる♪ 南国らしい黄色い魚がワラワラと集まってきました。水面直下で身を翻しながらエサをついばむ姿が実に美しいこの魚は、水族館でよく見るトゲチョウチョウウオです。
「つ、釣りたい…。釣って食べたい…」
手持ちで一番小さなハリに結び変え、見える魚を狙います。しかし、おちょぼ口で器用にエサをかすめ取るトゲチョウチョウウオに大苦戦。ならばと深い所までエサを沈めてみたところ、海底近くで黄色い魚がエサを吸い込む瞬間をとらえました。反射的に竿を煽ると「キュキュンッ!」と小気味よい手応えが伝わります。ついにヤッタ〜!
…、アレ。黄色いけど何かが違うぞ…? トゲチョウチョウウオじゃなくね?
体色はそっくりなのですが、掛かっていたのはヒメアイゴでした。ヒレのすべての棘に毒を備えるアイゴの仲間です。嗚呼…。
あらためて海中を凝視すると、水面近くにはトゲチョウチョウウオが群れているものの、その下に見える魚影はほとんどヒメアイゴでした。う〜ん、コレはコレでいいのですが…。
結局、夢中になって狙ったトゲチョウチョウウオはなかなかハリに掛からず、釣果はヒメアイゴのみ。
「今度はもっと小さいハリを結んで絶対に釣るぜ!」
そうリベンジを誓って、竹富島を後にしたのでありました。え、観光? 釣りに熱中するあまり島内散策どころか、『岸壁のみ』で終わったのでありました。何をしに行ったんだか…。
★ほのかなクセが泡盛と好相性!
色鮮やかな熱帯魚的外見ながら、体形はまんまアイゴなこの魚、手のひらくらいのアイゴを“バリコ”と呼び、紀州では一夜干しが郷土料理として知られています。ということで、このヒメアイゴも一夜干しにして晩酌のアテにします。
一晩干してから焼いたヒメアイゴは、香ばしい風味のなかに若干のアイゴらしいクセがあって実にいいお味。本家よりクセが弱いぶんだけ食べやすい印象です。
すっかり気に入ってしまった八重山のご当地泡盛『於茂登』の爽快かつまろやかな甘味は、少しクセのある干物との相性もよく、離島らしい素朴な晩酌を楽しむことができました。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。