最近の日本人は鯨肉を食べる習慣から遠ざかっており、食卓に鯨肉が載ることも稀で、鯨肉が余るために日本は計画通りの頭数を捕獲しておらず、結果的に「調査捕鯨が科学的に行われているとは思えない」というオーストラリアの主張が通ってしまった。
「調査捕鯨といいながら、実際に獲っているのは一種類。耳骨から鯨の年齢などを調べたり、胃の内容物を調べて生態系の観察をすることを目的としているが、日本は科学的調査を行っていなかった。実質的には商業捕鯨なのです。しかも、オーストラリアの指摘に対し有効な反論ができなかったことが、敗訴の原因となった」(社会部記者)
これで日本は南極海の捕鯨から離脱するか、IWC(国際捕鯨委員会)を離脱して商業捕鯨を行うしか術はなくなった。
捕鯨には調査捕鯨と沿岸捕鯨の2種類がある。水産庁は沿岸捕鯨には冷たいが、調査捕鯨には10億5000万の予算(2013年度)をつけ利権を守ってきた。その全額が、日本鯨類研究所に渡っているという。鯨研は調査捕鯨で得た鯨肉を一手に販売し、60億円以上を売り上げているのだ。加えて鯨研は、同時に水産庁の天下り団体でもある。
ジャーナリストの大谷昭宏氏が語る。
「日本の外交のまずさもあって調査捕鯨という名の商業捕鯨がオーストラリアに論破されてしまった。オーストラリアの庭先まで出てやっているわけですから、相手の言い分もわからないではない。尖閣列島や竹島問題で日本は中国や韓国に対して司法裁判所に訴えろと主張しているのですから、ここは判決に従い、南極海での捕鯨から撤退した方がいい。鯨の食文化というなら、これまで伝統的にやってきた沿岸捕鯨で十分足りるはずです」
捕鯨保護というなら、水産庁は伝統的な沿岸捕鯨を守るべきなのだろう。