8月4日、トヨタ自動車の豊田章男社長は、マツダとの資本提携を発表した。いわゆる“EVドミノ”と呼ばれている一連の流れを指してのことだ。
「フォルクスワーゲン(VW)のディーゼルエンジン排ガス不正問題で、ディーゼル車に対する信頼が大きく失墜し、その反動から電気自動車(EV)に対する需要が高まってきました。英仏政府は2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売禁止を発表し、VW、BMW、ダイムラーは'25年に販売台数の25%を電気自動車にする計画を、またボルボは'19年以降に発売するモデルを電気自動車かハイブリッド車にする計画を発表しました」(自動車ライター)
この動きを受け、未来の車は水素燃料電池自動車(FCV)と捉えていたトヨタも重い腰を上げ、マツダと提携して電気自動車の開発に動き始めたわけだ。
「EVドミノは、長らくハイブリッド車でトヨタの後塵を拝してきたドイツメーカーと、深刻な大気汚染にさいなまれ、電気自動車の普及を国を挙げて推し進めている中国の利害が合致したことで始まっています。中国資本のボルボがガソリン車を販売しない方針を打ち出したのは、EVドミノの仕掛け人が中国であることを裏付けているようなものです」(同)
実はFCVこそが未来のクルマであると、世界中の自動車メーカーは分かっている。しかし、それを実行するにはあまりにもコストがかかる。
「トヨタは『MIRAI』を発表するなど、そこをやり始めた。完成すると自動車業界は完全にトヨタの天下になります。中国は参入障壁の低い電気自動車をスタンダードにすることで、電気自動車業界における中国メーカーの躍進を狙っています。そこに一か八かで欧州が乗ったようなものです」(同)
王道を突き進んできたトヨタに不意に襲いかかったEVドミノ。果たして、戦いの荒波を乗り切ることができるか。
いま前例を見ない“海図なき戦い”が始まっている。