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先生、実は派遣社員だった!

 東京都台東区の区立小学校に勤務する臨時講師2人が、人材派遣会社から来た派遣社員であることが分かった。児童やPTAにはその実態が伏せられており、教室でトラブルが発生した場合の責任の所在があいまい。PTA関係者は、「ロリコンなど問題教師ではないと、だれがどうやって見分けるのか」と疑問を投げかける。

 区立小の増員要請に応じて区が臨時講師として派遣社員を受け入れるのは、2006年度から今年で4年目。教員免許を持つ派遣社員2人を、現在1校に配置している。国語、算数の授業で、教壇に立つ担任教諭を補助し、児童の机を回って個別に指導したり、班学習で教諭と手分けして指導に当たったりするのが彼らの業務だ。児童にとっては担任と同じ「先生」であることに違いないが、身分は極めて不安定。勤務時間は平日(月〜金)午前8時半から午後0時半までの実働4時間で、時給1500円。性別や年齢などはプライバシーを理由に開示されていない。
 公立学校の教職員は、地方公務員法、学校教育法によって、「禁固以上の刑に処せられた者」などは欠格者とされ就くことができない。ところが派遣社員の場合、身分は公務員でなくあくまでも人材派遣会社の社員であるため、これらの法の適用を受けない。本来なら児童・生徒の前に立つべきでないと社会的に断じられたはずの人材が、「先生」として何食わぬ顔で教室に入る恐れさえあるのだ。
 社団法人東京都小学校PTA協議会の新谷珠恵会長は、「ペドフィリア(小児性愛者)が紛れ込むのが一番怖い。ネットの世界では彼らが『教員免許を取りました』『小学校に採用されました』などと平気で書き込んでいる」と眉をひそめる。
 都内の公立小中学校で働く「先生」は都が採用した正規の教職員のほか、市区町村ごとに必要に応じて臨時講師を採用。ALT(語学指導助手)などを民間企業からの派遣に頼るケースもある。
 しかし、担任の補助を目的にあえて教員免許取得者を派遣社員として受け入れるのは、全国的にも異例だ。

 区教育委員会は、「学校で児童にもPTAにもちゃんと説明しているし、何ら問題はない」(担当者)と言い切る。しかし同小は、「他の先生と分け隔てなく接してもらうために、派遣社員だということを子どもたちには話していません」(校長)と全く逆の見解。
 ただ、前出の都PTA協議会会長・新谷氏は、「『あの先生は派遣社員だ』とはPTAにも言わない方がいい。予断を与えることになる」と、学校側の姿勢に一定の理解を示す。
 学力低下や学級崩壊に対応するため各学校は、1人でも多くの「先生」が欲しいというのが実情だ。他校と比べ人員の上積みを認めてもらっている手前か、同小の同僚らは派遣社員の受け入れいかんについて口が重い。
 しかし、区内の別の中学校で教べんを執る教諭は、「区採用の臨時講師とでさえ、勤務形態が違って意思の疎通が取りにくい。相手が派遣社員だったらその壁はずっと高くて厚いはず」と現場の迷走ぶりを代弁する。
 そもそも公立学校の教育現場での派遣社員活用について文部科学省は、「初めて聞いた。法的に不可能ではないが、教育という仕事の特殊性から、代替性の高い採用の方法は望ましくない」(初等中等教育企画課の担当者)と困惑気味なのだ。
 ところが、当事者の区教委は、「あくまでも正規教職員の補助業務なので、問題はない。他機関にお伺いを立てるようなものではないし、内部からも何ら疑義は出ていない」と強調する。
 一方、労働者派遣法は、ソフトウエア開発など一部の特例業務を除き、3年を超えて同一業務に派遣社員を就かせることを禁じている。
 06年度に派遣社員の臨時講師制度をスタートした台東区は、3年目となる08年度末でいったん受け入れを停止。法で定めた3カ月のクーリング期間を過ぎた今年9月に再開した。「本来なら7月から受け入れられるが、夏休み明けに合わせた」(区教委)との説明だ。
 しかし、厚生労働省は「労働者派遣はあくまでも臨時的、一時的な労働者の需給調整の仕組み」(職業安定局の担当者)として、派遣可能期間の満了後は直接雇用などに移行するよう関連団体に要請している。
 「3年超え」について、区教委、初年度に引き続き今年度も事業落札した人材派遣会社とも「3カ月空けているので違法ではない」と口を揃えるが、前出の厚労省担当者は、「法の趣旨を理解していただいていないのだとすれば、改めてもらうために、派遣元・先とも是正指導や助言の対象になる」と、法抵触の可能性を指摘している。

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