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海を渡る「故人の遺品」〜高値で売買される日本製中古〜①

 名古屋港で鉄製の大型コンテナが倉庫に横付けされ、従業員たちが荷物の積み込み作業に追われている。コンテナの大きさは長さ約12m、横約2.5m、高さ約2.5mに及び、ぎっしり詰めれば10tに達する。重量のあるものは下に、軽量なものは上にと作業員は慣れた手つきで手際よく積み込んでいく。この船の行先はフィリピンだ。

 荷物の主は不用品の買い取り、遺品整理を行う『ZERO PLUS株式会社』(愛知県豊橋市)だ。同社の荒津寛代表取締役はこう語る。

 「荷物はすべてリユース、つまり再使用が可能なもので、産業廃棄物や一般廃棄物などはありません。もちろん、中には遺品整理で回収した遺品もありますよ。大きいものは家電製品や大型クローゼット。小さいものは靴、ゴルフボール、食器類と何でもありです」

 同社は毎週40tもの日本製の中古品を名古屋港からフィリピンに輸出している。マニラまで直行便なら1週間ほどだが、台湾や中国を経由するため倍の日程がかかるという。倉庫には家具や家電製品、日本人形、プラスチック製のおもちゃ、額入りの貝殻細工、衣類などが山積みにされ、輸出される日を待っている。

 同社がフィリピンに日本製の遺品、中古品の輸出を始めたのは15年ほど前。産廃処理業を経営する中で、再使用が可能なのに捨てられることに疑問を抱き、フィリピンにブラウン管テレビを輸出した。この時、輸出品が安定するようにテレビとほかの物の隙間を埋めるため、日本製の小物を間に挟んで送ったことが予想外にヒットし、本格的に中古品輸出に乗り出した。

 「中古品は空き家などで遺品として回収したもの、あるいは倒産した企業、閉店したレストランなどから買い取ったものです」(荒津氏)

 孤独死も珍しくない時代に突入し、遺品回収業者も年々増加傾向にある。故人の遺品をめぐり、遺族とトラブルになることも少なくない。ある遺品回収業者はこう話す。

 「まず遺族に故人の遺品を全面公開します。遺品の公開も葬儀の慌ただしさが一段落した四十九日頃に行います。公開した遺品をリストアップし、残すもの、捨てるものを遺族を交えて全員で話し合います。孤独死の場合、タンスや机の引き出し、衣類のポケットなどは重点的に探しますね。現金や通帳、キャッシュカード、実印などがあることが多いですから。見落としがちなのが自動車のダッシュボードや旅行カバンです」

 日本から輸出された遺品、中古品はマニラ港に陸揚げされた後、オークション会場に運搬され、競売にかけられる。

 現地のオークション事情に詳しい『リサイクル通信』(東京都中央区)の瀬川淳司氏はこう話す。

 「フィリピンには現在9カ所ほどのオークション会場があります。ここに参加するのはフィリピンでリサイクルショップを経営するプロの業者がほとんど。なので一般客はまれですね。フィリピンの業者には、オークションで欲しいものを自分で選んで買うタイプと、コンテナごとまとめて買い上げるタイプの2つがあります」

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