「ゴーン社長の若い頃のエピソード。米ビッグ3の一角に入社したかったが、試験に落ちてしまった。以来、GMに代表されるビッグ3に対するコンプレックスを持つようになったという。GMが経営不振に陥った際には老獪な投資家の口車に乗り、よせばいいのに“GMのCEO就任”に意欲を見せた揚げ句、件の投資家が株価急回復に乗じて巨額の利ざやを稼いだのとは対照的に、GMから全く相手にされず、大変なピエロ役を演じたことで天下に醜態をさらした。そのゴーン社長が、復活したGMを抜き去れば感慨もひとしおでしょう」(日産ウオッチャー)
本質的には「シタタカな野心家」で知られるゴーン社長のこと、さらに次なる手立てにも抜かりがない。
日産・ルノー連合は一昨年春、独ダイムラーと資本・業務提携したのを機に関係を深めている。今年に入って日産が米国で生産するエンジンをダイムラーのメルセデス・ベンツに初めて搭載するほか、次世代車開発や電気自動車関連部品の相互供給でも合意。日産が1560億円を投じてメキシコに建設する新工場のライン3本のうち1本をダイムラーとの合弁生産にすると表明するなど、蜜月関係をアピールしている。
そこに市場関係者はゴーン社長の次なる戦略を指摘する。日産とルノーは、ともにダイムラーに1.55%ずつ出資し、ダイムラーは両社に3.1%ずつ出資する間柄だが「資金力で勝る日産・ルノー連合が、クライスラーと決裂したとはいえ、米ビッグ3の一角でもあったダイムラーを買収する布石ではないか」と深読みするのだ。
ダイムラーの販売実績は160万台で、うちベンツ部門は109万台。これがアフトワズを含む日産・ルノー連合にソックリ組み込まれるとなればトータル963万台となり、GMやVWが演じる「われこそナンバーワン」の鞘当てを尻目に、文句なしの世界一に躍り出ることになる。
現在ランクされる世界の4位と、躍進の可能性がある3位や2位では大違い。買収戦略で一気に首位の座をつかめるとあっては、ゴーン社長の血が騒がないわけはない。