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ブラック”の烙印が重い… ジリ貧ワタミ不都合な真実

 中年オヤジ憩いの大衆酒場を「時間と空間を楽しむ場所」に変えたといわれる革命チェーン『和民』。運営会社ワタミ創業者の渡邉美樹氏は「外食産業の風雲児」ともてはやされ、テレビのコメンテーターなどに連日出演するスター経営者になった。

 しかし、今や誰の目にも迷走は明らかだ。
 昨年3月期は上場以来初の最終赤字(49億円)に塗れ、今年3月期の純損失は従来予想の70億円から2倍近い128億円に膨れ上がったと公表した。まさに「坂道を転がり落ちる」の言葉がピッタリ。何せ2年前には320億円だった純資産が今年3月期には102億円まで落ち込み、このまま財務が改善せず今期も100億円超の赤字を垂れ流せば自己資本を食いつぶして債務超過に転落し、倒産の危機に直面する。

 ヒタヒタと迫りくる非常事態を前に、ネットの掲示板には驚くべき書き込みさえある。いわく「この会社はミッキーが政界に出るための道具にすぎない。本人がいない今、存続する意味がない。早く倒産して社名変えなきゃどこまでも落ちるよ」(原文のまま)とバッサリ斬って捨てるのだ。
 ミッキーとは創業者の渡邉美樹参議院議員。2年前の参院選出馬に際し、会長ポストから辞任し、会社の経営には関与していないとはいえ、現実には有限会社の『アレーテー』なるプライベート会社を通じてワタミ株の26.2%を保有する事実上の筆頭株主だ。一方、今年の3月1日付で社長に就任した清水邦晃氏は、明治大学在学中から『和民』のアルバイトとして働き、後に大学を中退して入社した経歴を持つ。渡邉氏にとっては大学の後輩に当たる。

 それにしても、なぜワタミが“難破船”寸前の醜態をさらしているのか。証券アナリストは「画一的なメニューが並ぶ居酒屋チェーンは客離れが止まらない。これに若者のアルコール離れの追い打ちも加わって、居酒屋業界は深刻な低迷が続いているのですが、ワタミには固有の事情もある」と指摘する。従業員に対する過酷な勤務シフトを強いた結果、過労死裁判に発展するなど“ブラック企業”のイメージが定着したことから客離れが加速しているのみならず、全国の店舗で慢性的な人手不足を招いたというのだ。
 実際、ワタミは「人出不足の解消が難しい店舗と不採算店」を前期に102店閉鎖したばかりか、今期も85店の閉鎖を計画している。アナリストが続ける。
 「スタッフがやる気満々ならばともかく、“ブラック”の烙印を押された会社が店舗閉鎖という名の戦線縮小に大きくかじを切れば負のスパイラルに陥る。当然ながら売り上げに響き、収益低下に直結します。ネットの掲示板に書き込まれた『社名変えなきゃどこまでも落ちるよ』の指摘は、まさに言い得て妙です」

 実はワタミの誤算には続きがある。就任直後、清水社長は4月からメニューを改定し10年ぶりの大幅な値下げに踏み切った。前年に増税などを理由に価格を15%上げたものの、顧客アンケートで「料理の提供が遅い」「それぞれの料理の量が多過ぎて他に注文できない」「価格が高い」の三つが多かったことからの戦略転換である。生ビールを490円から450円に、ハイボールを450円から290円に値下げし、全体の2割だった税抜き300円未満のメニューを4割に増やすなど、確かにバイト出身社長ならではの“大英断”だった。
 ところが、今年5月の前年比実績は売上高89.7%、客数89.3%と逆に落ち込み、客単価だけは100.4%と横ばいだった。他社との競争が激化する中、値下げが客足を遠ざけ、売り上げ減をもたらしたのだから皮肉である。

 「ここにワタミの構造的な問題が潜んでいる」と、外食産業に詳しい関係者は喝破する。
 「安ければ客が殺到するというのは、牛丼各社が“体力の消耗戦”と揶揄されるほど値下げ競争にウツツを抜かしていたころの発想です。そもそも、おいしくなければ客は群がらない。加えて、ワタミは“ブラック企業”のレッテルがマイナスに作用している。値下げした分、人件費がカットされ、ますますブラックの泥沼にはまるのではないかと警戒されるのです」

 ユニクロ、すき家、ヤマダ電機など世間から“ブラック”の烙印を押された企業は他にもある。しかし、名指しされた各社は曲がりなりにも汚名返上に向けた施策を打ち出している。なぜ、ワタミだけピント外れなのか。
 「経営に関与しないとはいえ、一代で“王国”を築いた渡邉前会長の存在感はやはり大きい。子飼いの清水社長が、その呪縛から簡単に逃れられるわけがありません」(ワタミOB)

 傷ついたブランドイメージの刷新には、ネットの指摘通り社名と店舗名の変更が早道なのかもしれない。

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