search
とじる
トップ > 社会 > 福島原発「作業員6000人」の現実(第3弾)ジャーナリスト・水石徹 犯罪者、悪党が紛れ込めるここはオウム真理教の「第一サティアン」(3)

福島原発「作業員6000人」の現実(第3弾)ジャーナリスト・水石徹 犯罪者、悪党が紛れ込めるここはオウム真理教の「第一サティアン」(3)

 採用期間に関しては、1年と5年契約がある。だが契約が済んでも、それが保障されるわけではない。なぜなら、目には見えないが数字でハッキリ出てしまう被曝線量という難敵が常時、立ちふさがっているからだ。
 原発作業員の被曝線量は、限度が労働安全衛生法で「年間50ミリシーベルト、または5年間で100ミリシーベルトまで」と定められている。健康への悪影響を考慮してのことだ。
 俺が所属する孫請けは、それよりちょっと少な目で年間40、5年間で80と決まっている。元請けの大手ゼネコンの自主基準に従っているようだ。他のゼネコンもだいたい同じだね。
 1年契約で年間40以内の被曝なら、同じ会社で契約更新できる。ところが40オーバーだと、1年契約だから、いまの会社を辞めねばならない。
 ただし、別の会社に移ってまた、ゼロから始めることはできる。これを毎年繰り返し、“被曝渡り鳥”になって敷地内を飛び回っている作業員がいる。
 5年契約だと、年間40以内なら最後まで働ける。しかし、その前に基準線量80ミリシーベルトになったら、原発作業員としてはお払い箱だ。
 どんなに働きたくても、原発では働けない体になっちまったら、雇ってくれるところなんか、ありゃしない。目一杯被曝させて使い捨てにする。だから、人殺しでも強姦魔でも次々と調達せにゃならんのさ。

 作業員は全員がいくつも線量計を携帯する。そのブザーが1回鳴ると、被曝線量は200マイクロシーベルト。できるだけ被曝させまいとする会社は、2回鳴ったら、その日の作業は中止させる。だが、3回鳴ろうと4回鳴なろうと知らんフリして作業を続けさせる会社がある。休憩室で一服やっていると、その会社の作業員がやって来て、とにかく怒るんだ。
 「ひどすぎる! 俺たちを何だと思っていやがる! いざとなったら、ブッ殺してから辞めてやる」
 ってね。でも、上司の前では黙り込んでいる。仕打ちが怖いからだ。上司の機嫌を損ねると、「あいつはやる気がない。まともに仕事もできない」と勝手に決めつけられ、わざと放射能が高いところに配置される。
 当然、被曝線量が上がるから、その数値が他の作業員よりも早く基準値に届いてしまう。結局、お払い箱にされる。危険で汚い放射能と同じく、クビに追い込む手口も汚いんだ。

 問題になった「最後は金目でしょ」発言の石原(伸晃環境相)は、俺たちが働いている福島第一原発を「第一サティアン」とテレビで言って大問題になったことがある。
 まあ、オウム真理教ほど悪質じゃないが、石原の言うことがまんざら的外れとも言えないんだ。暴力沙汰はないものの、目に見えない放射能で被曝させるから、“見えないリンチ”って言われる。こりゃ始末が悪い。

 そして、こんなこともある。採用の際、
 「放射能が特別低いところに配置するから安心しろ」
 と言われ、いざ働き始めたら、それとはまったく逆で、放射能が特別高いところに配置されるケースが後を絶たない。「話が違うじゃないか!」と、いくらわめいたところで、どうにもならない。被曝線量が基準値に届いたら、「ハイ、サヨナラ」で終わりだ。
(以下次号)

社会→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

社会→

もっと見る→

注目タグ