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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 民主党はなぜダメなのか

 時事通信が10月に実施した世論調査で、政党別支持率は自民党の25.7%に対して、民主党は2.9%だった。昨年まで政権与党だったことを考えると、その凋落ぶりは甚だしい。もちろんその原因は、民主党の政策があまりに酷いからだ。それを象徴したのが、10月21日の衆議院予算委員会で前原誠司民主党元代表が行った質問だった。前原元代表は安倍総理に向かってこう主張した。
 「しょせん、財政出動、量的緩和というのは時間稼ぎであって、この時間を稼いでいる間に日本が抱える構造問題、人口減少とか歳出の改革、成長戦略の着実な実行、こういったものに移れるかどうかが私は大切なことだと考えています」。

 財政出動や金融緩和というマクロ政策は痛みを緩和させるカンフル剤に過ぎず、日本経済を成長させるためには構造改革しかないというのが、前原氏が主張することなのだ。もちろんこれは大きな間違いだ。世界恐慌、昭和恐慌、そして何より最近15年間にわたった日本のデフレ不況も、すべてマクロ経済政策の誤りによるものだった。財政や金融を引き締めすぎて、経済が失速したのだ。
 にもかかわらず、前原氏はどうしても財政引き締めをしたくてたまらないようで、こう続けた。
 「これだけ莫大な借金が増えてくる中で、公共事業を含めた歳出を見直さなければならないのは事実でしょう」、「時代にあった公共事業があるかないかということを含めて選択と集中をやるのは当たり前で、その中で総量を減らしていくのは、いまの財政状況を考えたら当たり前のことじゃないですか」。

 もちろん当たり前ではない。前原氏は、歳出削減や増税をしない限り財政再建ができないと思い込んでいる。しかし、財政の再建方法は他にもある。経済のパイを大きくすることだ。借金の額が変わらなくても、パイを大きくすれば、借金のGDP比は下がっていく。もちろん、増税で財政バランスを回復する方法もある。ただし、それは極端な経済収縮という被害をもたらす。最近でいえば、ギリシャが典型だ。
 前原元代表は、財政拡張だけでなく金融緩和にも矛先を向けている。「金融緩和をずっとやり続けるんですか。行きはよいよい帰りは怖いということをずっとやり続けるんですか」と安倍総理に迫ったのだ。答えは簡単だ。ずっとやり続けるのだ。インフレが高まる懸念がなければ、出した資金を放置して、何の問題もないのだ。
 結局、民主党の最大の問題点は、財務省の使徒となって、ひたすら財政と金融の引き締めを主張するだけになっているということだ。

 基本的な構造は、マクロ経済政策で経済のパイの大きさが決まり、構造改革などのミクロ政策でパイの分配が変わる。アベノミクスは、パイが大きくなっているのに、庶民にその分け前が回ってこないのが問題なのだから、むしろ野党として批判しなければならないのは、庶民の所得を減らす政策だ。
 つまり、消費税増税や大企業優遇政策こそ批判しないといけないのに、前原氏はそれができない。そんな元代表には、そろそろおいとまを願わないと、民主党が再び国民から支持されることはないだろう。

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