イチローが現在所属するマイアミ・マーリンズでは、ヤンキースの元主将、デレク・ジーター氏がCEO(最高経営責任者)に就任することが決定。それまではイチローの契約延長も期待されたが、このジーター新CEO就任で、日本球界復帰が決定的だという。
今季、マーリンズはナ・リーグ東地区で首位から20ゲーム差の2位で終えた。'03年を最後にプレーオフ進出から遠ざかっており、ジーター新CEOは大幅な選手の入れ替えと若返りを断行する構えだ。そして、イチローには敬意を払う形で、FA選手とし、その上でメジャー最低賃金の54万5000ドル(約6000万円)を提示する方針だという。
イチローの今季の年俸は200万ドル(約2億2000万円)。日米で“レジェンド”と称される男が、とても飲める金額ではない。つまり「お好きな球団へどうぞ」というシナリオである。
かといって、来季44歳になるベテランを200万ドルで迎えるメジャー球団はない。結果として、「背番号の51歳までプレーしたい」というイチローの進路は、日本球界に限られるのだ。
「心待ちしているのが古巣オリックスです。宮内義彦オーナーはイチローとの関係が途切れないようオリックスグループのCMに起用し、昨オフにはマリナーズ時代の同僚・長谷川滋利氏をシニアアドバイザーに就けて有事に備えています」(在阪スポーツ紙記者)
オリックスがイチロー獲得を急ぐのは、今ドラフト対策でもある。1位候補は田嶋大樹(JR東日本)、清宮幸太郎、中村奨成(広陵)、安田尚憲(履正社)。メディアには「1位指名は当日決める」と話しているが、プロ球団との面談の際、イの一番で駆け付けていることから、意中の候補が清宮であることは間違いない。
興味深いのは、オリックスがドラフトの抽選でもっか11連敗中ということだ。逆に言うと、これだけ負け続ければ、確率的には清宮を引き当てる可能性がもっとも高い。しかし、問題は当選クジを引き当てても、清宮が入団してくれるかだ。
「そこでイチローを教育係に付け、清宮の心を射止める作戦なのです。1日でも早くメジャーでプレーしたい清宮にすれば、イチローから得られる情報は何物にも代え難い。イチロールートで野球留学も可能ですし、すべての問題は解決します」(オリックス担当記者)
これで決まったも同然? だが、肝心の宮内オーナーは微妙な言い回しに終始する。
「外国の球団が契約する限りは帰ってこないだろう。ただ、日本でプレーするとなればうちの球団以外考えられないが…」
この発言は、イチローの地元、中日ドラゴンズも熱烈ラブコールを送っている、との情報を察知したからだ。
今季の中日は59勝79敗5分けの5位で、5年連続Bクラスに沈んだ。今オフは本塁打王ゲレーロも退団する。ドラフトで清宮を引き当てない限り、来季の観客動員が思いやられる。
ニッチもサッチもいかない状況に、西山和夫球団代表は「すべてが補強対象」と言い切り、イチローの獲得にも躍起なのだ。オリックスコーチ時代にイチローを可愛がり、親交が深い元中日監督の山田久志氏に窓口を期待している。
「星野仙一監督(当時)が'99年に中日投手コーチに山田氏を招聘したのは、イチロー獲得('00年にポスティングでメジャー移籍)を見据えたものだった。あわよくばFAで中日に呼ぼうというもの。それが叶わず、中日は'02年から山田氏を監督に起用したが、これにも将来的にイチローを獲得する布石が秘められていた。もしイチローが日本復帰に中日を選べば、山田氏がGMに就く青写真もある」(スポーツ紙デスク)
現役にこだわるイチローに、現中日監督の森繁和氏も、近い将来の監督禅譲を申し出るものとみられる。
両球団にとって、年俸2億円のイチローは超お買い得だ。日本へ復帰すれば、オープン戦だけで十分に元が取れる。メディアの注目、人気度アップ、興行収入を考えれば、倍額を出してもおつりが来るという計算だ。
「彼が51歳まで現役を続けると言っているのは、プロ野球の監督には興味がないからです。今後の目標は2つ、'20年の東京五輪出場と政界転身です。侍ジャパンの稲葉篤紀監督は中京大中京高出身。高校3年夏の愛知大会決勝で、イチローのいた愛工大名電に雨天再試合の末に3対5で敗れて以来、2人の親交は深く、侍ジャパン入りは容易でしょう。もう一つは、現役引退後の国会議員転身。選挙区を考えれば、愛知県か兵庫県となる。その延長線上の日本球界復帰なのです」(大手広告代理店関係者)
反骨心の象徴であるイチローは、王者ソフトバンク、広島、名門巨人、猛虎阪神を相手にしてこそ存在力を増す。古巣への人情か故郷に錦か、レジェンドが決断を迫られている。