前半戦最初の天王山は7月2日からの甲子園。これまで巨人は阪神に2勝6敗1分けと苦戦しており、交流戦前の東京ドームに続いて3タテを食らうようなことになれば、首位陥落、そのままズルズル後退という最悪のシナリオも否定できない。
「今季の巨人が阪神に勝てない原因は、能見篤史(34)、榎田大樹(26)の両左腕を全く打ち崩せないからです。左に弱いのは今に始まった事ではありませんが、巨人打線は“左高右低”が特に顕著。これでは他球団の投手は打ち崩せても、阪神は攻略できない。飛ぶボールの件もあり、右の大砲の補強こそが急務です」(ベテラン巨人担当記者)
巨人は12球団一といっていい豪華な投手陣を抱えており、昨季の日本一が物語るように、打線には多少目をつぶってもペナント制覇は可能という自負があった。しかし、状況は一変。“飛ぶボール問題”にクレームをつけるより先に、大型トレード(7月31日が今季の期限)交渉を本格化させようというわけだ。
狙うのはむろん各球団のクリーンアップクラスの右打者となるが、絞り込んだターゲットは“広島の4番”だという。
「カープの主砲として長く君臨してきた栗原健太内野手(31)です。昨年5月に右肘の手術を受けたことが影響し、今季は調整遅れで極端な成績不振。5月6日には二軍に降格させられたのですが、年俸1億4000万円の高額選手を、けが以外の理由でファームに落とす余裕などカープにはないはずで『トレードに備えた環境作りでは』という声があるのも事実です。栗原は昨秋、国内FA権を獲得したのですが、手術の事もあり、FA宣言せずにカープに残留したいきさつがある。ここにきて飛ぶボールが明らかになったことで、巨人が栗原の長打力に再注目しているのです」(セ某球団の編成担当)
2009年のWBCで侍ジャパンの監督を務めた原監督は、栗原の実力はもちろん、練習態度など野球に懸けるひたむきな姿を高く評価している。期待するのは“左腕対策”が一番だが、狙いはほかにもあるという。
「広島と阪神には太いパイプがあり、先輩の金本知憲、新井貴浩がそうだったように、カープの4番はFAで阪神移籍のルートが出来上がっています。順当なら、栗原も引退した金本に代わって今季から阪神移籍という流れだったのでしょうが、右肘手術で1年保留となった。巨人は、それに待ったを掛けようというのです。阪神に移籍して脅威になるのなら、いっそオフを待たずに青田刈りし、トラの刺客に差し向けようと…。その意味では今回の緊急補強策は、阪神-巨人の場外天王山ともいえますね」(前出・ベテラン記者)