先週末に発売された公式コミカライズ本はネット通販、ショップ、書店などで完売が相次いだ。ClariSが歌うオープニングテーマ『コネクト』もCDシングルランキングで上位にランクインするなど好調。今月16日にはKalafinaが歌うエンディングテーマ『Magia』の発売も控えており、ますますの躍進が予想されるだろう。最近マンガやライトノベル原作のアニメが席巻する深夜枠で、これほど好調なオリジナルのアニメは珍しい。この好調の理由は、本作の作品構成の旨さにある。
『魔法少女まどか☆マギカ』というタイトルでもわかるように、この作品のジャンルは魔法少女モノである。だが従来の魔法少女モノとは一線を画す。可愛らしいキャラクターと不釣合いな、重々しく鬱々としたストーリー。主要キャラの死亡、現在放送が終わった6話まで主人公のまどかが一度も魔法少女に変身しないなど、おおよそ魔法少女で“やってはいけないこと”を全てやっている、従来の魔法少女の観念を覆すアニメとなっている。この真新しいさが“お約束”に飽きたアニオタたちを惹きつけた。
こういった作品作りをできたのも、大手スポンサーに頼らない深夜枠だからこそであろう。朝や夕方枠のアニメだったら1話で魔法少女に変身しない時点でスポンサーから苦情が出るはず。主要キャラの死亡などもっての他だ。脚本家もアニメ作品出身ではなく、PCゲーム界で活躍し、ダークなテイストの作品での評価が高い虚淵玄氏を抜擢するなど、深夜枠独自の小規模メディアミックスの自由度の高さを最大限利用している。
本作のような“やってはいけないこと”をあえて犯してヒットしたアニメで一番有名なものは、それまでのロボットアニメの観念をぶち壊したエヴァンゲリオンだろうか。この作品にはエヴァに近いものを感じる。ネットやアニオタの会話で今後の作品展開がどうなるか、盛んに考察が行われている点がよく似ているからだ。あとはこの勢いを維持したまま、作品本編のBD、DVDがヒットすれば人気は不動のものとなるだろう。最近は先が読めないオリジナルアニメが激減していたので、ぜひヒットしてオリジナルアニメの増える起爆材になってもらいたいと願う。(斎藤雅道)