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斎藤佑樹 勝っても払拭できないライバルの影

 6試合ぶりの勝利に日本ハム首脳陣も安堵していたに違いない。10月6日の対楽天戦に先発した斎藤佑樹(23)が7回無失点と好投し(被安打4)、6勝目を挙げた。関係者によれば、斎藤は「あの試合」で“精神的スランプ”に陥っていたという。「あの試合」とは、06年夏の甲子園以来となった田中将大(23)との直接対決である。田中がプロ通算61勝、4年間の差(同日時点)を見せつけたものの、斎藤は「努力していくことの価値を見出すことができた。この差は決して大きくない。全く追いつけないものではないと思う」と、前向きに語っていた。しかし、実際は違った。『投手』としての力量差を圧倒されていた。

 9月10日の直接対決後の斎藤について、ライバル球団のスコアラーがこう評していた。
 「変化球で打ち損じを誘う投球スタイルは変わっていないと思う。『打てそうで打てない』のが斎藤クンの持ち味だから。直接対決の少し前からストレートを使う割合が増えていたんだけど、10月6日の楽天戦ではスライダーを多投していました。今まで要所で使っていたのはツーシーム系の変化球。それがスライダーに変わりつつある」
 さらに「6日の楽天戦はいつもよりスライダーのキレが増していた」とも語っていた。それが勝因でもある。
 『スライダー』は田中のウイニングショットでもある。斎藤も高校時代から投げてきたが、プロでは“持ち球の1つ”といった程度。スライダーの精度が『投手評価』の全てではないが、斎藤は直接対決後、この球種について考え、改良を重ねていたという。
 こんな指摘も聞かれた。
 「普通、力量差を痛感したら必死になりますよね? 斎藤は身体を動かす前に考えるんですよ。スライダーの精度? 腕の振りと握り方を変えただけ。投手としてレベルアップしたわけではない」(球界関係者)
 期待の裏返しから出た苦言ではあるが、確かに斎藤が必死に練習しているところや、自分を追い詰めている姿は見たことがない。ランニングにしても、途中でスピードを緩めるなどベテランのようなマイペースぶりだ。斎藤に物足りなさを感じる関係者が多いのはそのせいだろう。

 斎藤と田中の両方に面識があり、直接対決を観戦した高校野球関係者がこう言う。
 「2人の体つきが全く違いました。田中は大きくなり、斎藤はスマートなまま。『4年間の差』とはこんなに大きいのか、と」
 プロの世界は身体だけではやっていけない。また、頭脳だけでも生き残れない。
 斎藤を語る前に田中をもっと評価すべきなのかもしれない。斎藤はここまで18試合に登板し、6勝。4年前の田中は28試合に登板し、11勝を挙げた。一概に比較できないが、短期間で変化球をレベルアップさせたその頭脳に「必死さと筋肉も加われば」と、関係者が嘆くのも当然だろう。

※斎藤佑樹の9月10日の談話は共同通信の配信記事を参考にいたしました。

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