「星野さんの『黄色靭帯骨化症』は原因不明の難病。これは脊髄の後ろにある靭帯が骨のように硬くなり脊髄を圧迫するもので、足の痺れや麻痺が起こり歩行困難になります。さらに膀胱直腸障害も起きる。レントゲンやMRIで見つかったと思いますが、野球選手や格闘技選手など激しいスポーツをする人に多く見られます」(北里研究所病院スポーツ整形外科・辻医師)
人の体の中心にあたる「腰」は、生活する上で大切な場所だ。そこが痛むと整形外科に駆け込んだり、鍼灸治療やマッサージを受けるが、その原因に内臓疾患が関わっていると診断される場合もある。
「腰痛」はいったいどうして起こるのか。今回はその原因と仕組みを検証し、腰痛のない日常生活を送るにはどうすればいいかを考えてみたい。
腰痛症などの専門医は、「腰痛を発症させる主な原因」として、次の3点を挙げている。
(1)筋肉からくる腰痛
激しい運動や重い物の持ち運びなどを行った後、腰痛を感じることが多い。筋肉の酷使や過度の緊張は腰痛の原因になる。この場合、一過性のものが多く、数日で筋肉の痛みと共に緩和する性質があるが、ぎっくり腰を併発する恐れもあるから注意が必要。
(2)骨格からくる腰痛
身体を支えている骨格のずれや歪みは、万病の元になる。特に背筋や脊髄の腰椎部に歪みやずれが生じることで起こる腰痛は、深刻な問題がある。また、デスクワークなどの仕事で長時間座り続ける姿勢の人は、椎間板ヘルニアや腰椎すべり症を起こしている可能性があり、治療のために手術を要する場合が少なくない。
(3)内臓からくる腰痛
一部の内臓疾患は腰痛の原因になる。肥大した内臓が内側から腰椎や腰の筋肉を圧迫することで、腰痛が発生する。内臓からくる腰痛は内臓疾患の症状の一つで、痛みが安静にしていても発症するので、検査が必要になる。
また、血管の疾患を原因とする腰痛もあり、動脈硬化が原因となって発生する大動脈瘤が腰に発生した場合、強い腰痛が起きる原因となる。
「もちろん、原因はまだ他にもあります。加齢にともなう腰痛もそうです。老化によって筋肉が衰え、骨が弱ることで自分の体重を支えきれずに腰痛が発生します。また、精神的なストレスが原因になって自律神経に異常をきたし、腰痛を引き起こすこともあります。その場合は、元を断たないと回復しない性質があるため、社会生活を送る上で大きな支障になってしまいます。近年はこうした心理的影響や社会的影響も腰痛の要因としてとらえるようになり、詳しく見ていく必要があります」
こう説明するのは、総合診療を営む加藤クリニック・加藤達弥院長だ。
加藤院長はさらにこう続ける。
「整形外科的な腰痛の場合は、『起き上がると痛い』『体をひねったり動かすと痛い』などの特徴があります。対して内臓が原因となる場合は、『痛みが徐々に増してくる』『熱が出る』『脚が痺れる』『排尿・排便に支障が出る』などの症状を伴うことがあり、酷い場合には、痩せてしまうこともあるので、痛みの場所も、一つの判断基準になります」