日本のスポーツ界が過去に経験したことのないバブルに沸いている。Jリーグが7月20日、来シーズンからイギリスの動画配信大手パフォームグループと、年間210億円で10年間の放映権契約を結ぶことで合意したと発表したからだ。Jリーグが受け取る放映権料は総額2100億円となり、これを原資に新たなファンの獲得と各クラブの経営基盤の強化を図るという。
「Jリーグは現在、スカパー!を主体とする日本の衛星放送会社と年間30億円ほどで放送契約を結んでいますが、一般視聴者に浸透していませんでした。パフォームグループは英・プレミアリーグなどを全世界に発信するインターネットの動画配信大手で、今後はスマートフォンなどで気軽に観戦できるようになります。これでサッカーくじtotoの売り上げも伸び、相乗効果でJリーグ人気も拡大。プロスポーツ・コンテンツの楽しみ方が変わる転機となる黒船的な出来事です」(スポーツ紙デスク)
気になるのは、この年間210億円の使い道だ。Jリーグは今後の理事会などで話し合うとしているが、巷間伝わるところによれば、目玉として挙げられているのが「世界的なビッグクラブ創設」か「飛び抜けた優勝賞金」。ACL(アジアチャンピオンズリーグ)を制覇し、絶対的なアジアのナンバー1リーグ作りが共通の目的だが、支持を集めているのは後者だという。
「特定のクラブに巨額資金を分配するのは、いかがなものか、という声が強い。現状JリーグにはJ1〜J3まで53クラブがある(U23のセカンドチームを除く)。全クラブへ平等に分配することが理想ですが、それでは底辺クラブの底上げはできても、リーグのレベル向上にはつながらない。そこで、210億円の『10%』程度を優勝賞金に充てる案が浮上しています。例えばトップのJ1優勝なら20億円。これなら、クラブ間の競争を煽れるとともにメディアの話題になり、人気アップにもつながる。優勝チームはそれを原資にビッグクラブを作ることができる」(大手広告代理店)
Jリーグの試合が世界配信されることで、世界中から気鋭の選手が集結する。欧州ビッグクラブのスカウトも視聴するだろうから、Jリーグで活躍し欧州クラブにステップアップするという方程式が、今まで以上に活性化する。アジアのファン、スポンサーも日本に目が向き、Jリーグの収益は上昇。8月のリオ五輪で日本がメダルでも獲得しようものなら…、まさにサッカーバブルの再来である。
問題なのがライバルのプロ野球だ。このままでは人気凋落は避けられず、看過することはできない。そこで進められているのが、日本ハムを逆転優勝させ、大谷翔平を王貞治、長嶋茂雄級のスーパースターに祭り上げるプランだという。
「いま球界が期待しているのが、大谷の“ルース超え”です。日本の野球ファンなら知らない人がいない伝説の男、あのベーブ・ルースは、メジャーで唯一2ケタ勝利&2ケタ本塁打を記録しています(1918年の13勝・11本塁打)。大谷は7月20日の楽天戦で11号を放っており、残り55試合とした7月25日時点で8勝。栗山英樹監督もルース超えは織り込み済みで、あと5、6勝は絶対に勝たせるつもり。米球界も大谷の二刀流に注目しており、達成すれば日米ともに大きな話題になるでしょう。その流れでリーグ優勝、クライマックスシリーズ優勝で日本シリーズを迎える。球界全体が大谷の活躍に期待を寄せているのが実情です」(在京キー局のプロ野球担当)
そんな“至宝”だけに、今季の大谷は前代未聞、想像を絶する活躍が続いている。6月5日の巨人戦(東京ドーム)では日本人最速の163キロを記録。従来の記録である、2008年6月1日のソフトバンク戦で記録したマーク・クルーン(巨人)の162キロを超えてみせた(大谷も'14年10月5日の楽天戦で同記録をマーク)。
しかし、球速の計測方法に関して、機器や方法が統一されておらず、表示の仕方にホーム球団の意思が多少なりとも働く。『クルーンを捨てても、大谷を売り出したい』と巨人も考えたのだろう。
入団初の「1番・投手」で出場した7月3日のソフトバンク戦では、初球のスライダーを右中間に強振。悠々と先頭打者アーチを放ってみせた。
「オールスターのホームラン競争も圧巻でした。準決勝で山田哲人(ヤクルト)を6-5、決勝で柳田悠岐(ソフトバンク)を3-2と、昨季のトリプルスリーコンビを続けて下して優勝。丸1カ月負けなしだった日本ハムの15連勝と言い、今年の球界には『ハハーン』と思えるフシがいくつもあります。球界全体で、何としてもスーパースターを誕生させようと必死です」(前出・スポーツ紙デスク)
それゆえ、デッドボールは絶対にNG。記録づくめの大谷翔平は、次にどんな伝説を作り出すのか。