その後、クルゼイロ監督を経て'07年に10年ぶりにC大阪監督に復帰。同チームをJ1に引き上げるとともに、香川、清武弘嗣(ニュルンベルク)、乾貴士(ボーフム)を育て上げ、ドイツ・ブンデスリーガへ羽ばたかせた。
「実は、南アフリカW杯後の日本代表監督の人選でもクルピ氏は有力候補の一人でした。しかし、サムライジャパンが組織で戦う欧州スタイルのサッカーを志向していたのに加え、本田が欧州で実力をつけたことから、イタリア人監督のザッケローニ氏の監督起用が決まったのです。しかし、今ではチームの柱が本田から香川に移り、次のW杯がブラジルで開催されることもあり、クルピ氏の存在が急浮上してきているのです」(スポーツ紙デスク)
ここにザックジャパンが抱える最大の問題が秘められているのである。
「エースで4番」とばかりにオレ様気取りでチームを仕切る本田と、その本田を司令塔としてトップ下に布陣させるザッケローニ監督。
しかし、ドイツ(長谷部、細貝、岡崎、内田、清武)、イングランド(宮市)、イタリア(長友)、ベルギー(川島)、オランダ(ハーフナー、吉田)の各国でプレーする欧州組はそれを認めない。本田以上に実力があるプレーヤーが香川と知っているからである。
ドルトムントをブンデスリーガ連覇に導き、マンチェスター・ユナイテッド入りが決定的な香川と、モスクワでくすぶっている本田。両者には雲泥の差があるにもかかわらず、本田をトップ下に据えるザック采配には批判の声が渦巻いているのだ。
「問題は『オレが、オレが』という本田のプレースタイルにある。先のアゼルバイジャン戦にしても日本のシュート数は18本あったが、肝心のFWのシュートはゼロ。トップ下の本田が自分で決めようとしたからです。ケガを乗り越え、10カ月ぶりに代表に復帰した舞台で自身を売り込み、ビッグチームに移りたい。その気持ちはわかるが、その思いは他の欧州組も同じ。だから不信感が募る。その点、香川は周りの選手にパスを出し、得点を演出できる。このまま本田のトップ下が続くようなら、香川シンパの選手から『ザック辞めろ』の声は決定的になるでしょう」(スポーツ紙記者)
クルピ氏の足音が日増しに大きくなっている。