電通時代にTBSの看板番組の『水戸黄門』制作にかかわったことでも知られる、加地隆雄・新球団社長の下、チーム大改造に着手した横浜の沖縄・宜野湾キャンプの評判は上々だ。ロッテから清水、日本ハムからスレッジ獲得などの補強もさることながら、尾花新監督の投手陣立て直しを核にしたチーム再建に期待が集まっている。
「横浜のキャンプは午後2時には終わってしまう。最下位なのに、12球団で一番短いキャンプとはどうなっているのか」という、昨年までの酷評を返上。午前中はみっちりとチームプレーの練習。その後、午後から投手陣に投げ込みさせる尾花方式が、評論家たちからも見直されているのだ。
すっかり気をよくした加地球団社長が、巨人球団首脳に対し、改めて尾花新監督を巨人から譲り受けたお礼を言いたいと思ったら、人づてに聞いた巨人球団首脳が顔しかめ、「今更何を言っているんだ」と吐き捨てたという。
昨年のリーグ3連覇、7年ぶりの日本一奪回に大きく貢献している尾花投手総合コーチをヘッドハンティングされたという、被害者意識の強い巨人球団首脳のアレルギー症状が少しも解消されていないのだ。寝耳に水だった現場の原監督も怒り心頭で、話が表面化すると、日本シリーズのベンチから尾花監督を外そうとしたほどだった。投手陣に関しては、すべてスペシャリストの尾花監督任せにしていたので、裏切られたとの思いが強く、春の宮崎キャンプになっても、尾花新監督率いる横浜の話題にピリピリしている。
「巨人の連中は器が小さいよ。尾花にコーチとして横浜に行かれたのならば、仁義を知らない引き抜きということで怒ってもいいよ。だけど、日本に12人しかいない監督となれば話は別だ。栄転だから、喜んで送り出すのが球界の慣例だろう」。おとなげのない巨人首脳の対応に球界OBは憤慨している。
が、尾花新監督にしたら、飛んで火に入る夏の虫だろう。「巨人のことは全部知っているから」などと挑発して、巨人イジメを看板にしようとしているからだ。巨人が尾花横浜を意識してくれれば、くれるほど、遺恨試合としてファンの注目度は増す。昨年まで2年連続最下位を大独走した横浜は、巨人キラーになるだけで、尾花新監督の評価は高まる。ある意味、こんな気楽な立場はない。
「V9超えを目指す」という大風呂敷を広げた原監督の方は、プレッシャーがかかる。横浜に叩かれれば、「巨人が勝ってきたのは、投手総合コーチだった尾花監督の手腕だったのか」と言われても反論できないからだ。今季の横浜vs巨人の新遺恨戦は面白い。