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球界地獄耳・関本四十四の巨人軍、ダッグアウト秘話(18) カズミさん

 V9エースがホリさん(堀内恒夫氏)さんなら、胴上げ投手はカズミさん(高橋一三氏=現山梨学院大監督)だった。王さんが三冠王に輝き、130試合目の甲子園の阪神戦で決まったリーグ9連覇の時もそうだった。なにしろこっちが先手を取ってしまえば、相手はカズミさんの術中に簡単にはまってしまう。

 あの外角へ沈むスクリューボールに面白いようにひっかかる。リードされているから、打たなければと相手バッターが焦れば焦るほどスクリューボールが生きてくる。あの粘り強いピッチングは誰もマネができないよ。指導者としても、型にはめない、その投手に見合った指導ぶりにはうならされる。日本ハムの武田勝は社会人野球のシダックス時代の教え子だし、巨人から日本ハムに移籍して活躍している林もそうだ。巨人での二軍監督、投手コーチ時代を良く知っているオレが「本当に教えるのがうまい」と太鼓判を押すだけではない。
 同じ高橋でも八方破りというか自由奔放というか、今、中大の監督をやっている善さん(高橋善正氏)がこう言っているよ。「セキ、1年目からリーグ戦でバリバリ投げられるヤツならオレのところへ連れてこい。いいボールがあっても5、6球しか続かず、将来性のある投手ならカズミに任せる」と。善さん流の表現だが、カズミさんの指導力を全面的に認めているんだ。
 変わり者が多い野球人の中でカズミさんほど堅実で真面目な人はいない。あの善さん語録の中に「オレは東映、巨人とどれだけの監督に仕えたかわからない。が、胃薬を飲まない監督は川上さんだけだ」というのがある。座禅の修行をしたりして何事にも動じない、泰然自若とした不動心の川上さんが、「一番信用できるのは、カズミだ」とお墨付きを出すのだから、間違いないし、たいしたものだろう。一番プレッシャーのかかる胴上げ投手を任せたのも、そういう信頼があっつたからだろう。

 巨人に入団してから自分の家を三軒も四軒も買ったが、借金が大嫌いですべてキャッシュだ。こういう話ばかり書くと、堅物で面白みのない人間だと思うかもしれないが、そうじゃない。カズミさんの方が一級上だが、ホリさんとも仲が良くて、よく同じ行動をしていた。ところが、ドジを踏むのはホリさんばかり。不思議とカズミさんは見つかったことがない。
 奥さんだって当時、人気女優の橘和子さんだからね。倉田誠の奥さんはその姉の姿美千子さんだから、義兄弟だね。カズミさんの方が年上だから、義理の兄貴になる。それにしても、真面目人間のカズミさん、その10倍も堅物の倉田さんに美人姉妹の奥さんだから、我々も驚いたよね。カズミさんの方が付き合いは早かったみたいだけど。
 まあ、それにしてもカズミさんは優しい亭主だね。後輩の新浦(寿夫)が結婚したときに、「女房は最初にガツンとやらないとあとが大変だぞ」と言っておきながら、自分はどうかというと、全く真逆。鍋が好きだというので、奥さんが毎日、鍋料理にして最後は雑炊を作ってくれる。それが1週間や10日続く。さすがに我々には「毎日鍋か」とぼやく。

 それなのに、奥さんにはさりげなく、「今日は寿司屋に行かないか」という言い方をするんだ。優しいんだから。あんな芸当はオレにはできないよ。「いくら鍋が好きでも、1週間も10日も食べられないよ」と、オレだったら、いや普通の人間なら、そう言ってしまい、夫婦げんかになるのがオチだろう。

<関本四十四氏の略歴>
 1949年5月1日生まれ。右投、両打。糸魚川商工から1967年ドラフト10位で巨人入り。4年目の71年に新人王獲得で話題に。74年にセ・リーグの最優秀防御率投手のタイトルを獲得する。76年に太平洋クラブ(現西武)に移籍、77年から78年まで大洋(現横浜)でプレー。
 引退後は文化放送解説者、テレビ朝日のベンチレポーター。86年から91年まで巨人二軍投手コーチ。92年ラジオ日本解説者。2004 年から05年まで巨人二軍投手コーチ。06年からラジオ日本解説者。球界地獄耳で知られる情報通、歯に着せぬ評論が好評だ。

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