search
とじる
トップ > スポーツ > 過去の遺恨消えず、ステーキ・フォークと鎖鎌で流血! 6・26「スーパーFMW」の場外ウラ事情

過去の遺恨消えず、ステーキ・フォークと鎖鎌で流血! 6・26「スーパーFMW」の場外ウラ事情

 かつて、プロレスにおけるすべてを破壊し、新たな世界を創造した男たちがいた。「邪道」と呼ばれることを恐れず、己の道を貫いた団体、それがFMW(Frontier Martial-arts Wrestling)である。

 古巣・全日本プロレスで“一度目の引退”の後、流浪の人生を送ってきた大仁田厚が、海外で活躍していたターザン後藤に声を掛け、男女混合・異種格闘技戦・有刺鉄線デスマッチなど、「なんでもアリ」のインディー団体を立ち上げてから早20年以上。途中、主要選手の離脱や借金、社長の自殺、そして崩壊…ダークでアンタッチャブルな数多の醜聞を繰り広げ、伝説となった。
 そして昨年12月24日、ターザン後藤が「スーパーFMW」として、FMWのリングを復活させた。
 つい先日、大仁田厚が6度目の引退を表明し、ファンの間のみで密かに話題となったばかりだが、ターザン後藤はブログで「俺達は心ある限りFMWは絶対に潰さん!」という大仁田の意志を受け継ぎ「言いたい奴はいくらでも言え! 誰が何と言おうと俺達がFMWだ」と高らかに宣言している。
 未だに、かつてFMWのスタッフであった茨城清志が過去のDVDを販売し続けるなど、遺恨が尾を引き、旧団体名を権利問題でそのまま引き継ぐことができなかったりなど、過去の負債やトラブルは山積み状態だが、それでも男たちの熱い情念だけは伝わってくる。

 そんなスーパーFMWの興行が、2010年6月26日、東京・新木場1st Ringで開催された。
 前座は、ネギやダイコンを手にしたニューハーフによるバルーンマッチや、バカボンのパパや駅員姿の芸人レスラーが対決する「真・下町プロレスvs.西口プロレス」。力士と女子レスラーによる男女混合異種格闘技、チェーンソーを振り回すレザーフェイスなど怪奇レスラーによる場外乱闘、果ては年齢不詳の演歌歌手・茜ちよみがセーラー服姿で登場するなど、イロモノを盛り込みつつも、「FMW認定インディー世界ジュニアヘビー級選手権」などガチンコ勝負もしっかりあって、まさに「なんでもアリ」というFMWの遺伝子を継ぐ内容であった。

 しかし、中でも圧巻だったのはラストの「ハードコア・ストリートファイト6人タッグマッチ」だろう。
 ターザン後藤とミスター・ポーゴという、若き日にアメリカでタッグを組んでいたという名コンビに、狂猿・葛西純ら外様レスラーたちが挑んだ。しかも、チラシには6人と書いてあるのにリングに上がったのは8人…のっけからメチャクチャである。
 ゴングが鳴るより先にバトルが始まり、ターザン後藤が海外修行時代にバイトのレストランで愛用したというステーキ・フォークを持ち出し、相棒のポーゴはいきなりカバンから鎖鎌を取り出した。
 アッという間にマットは血に染まり、客席の最上段まで巻き込んだ場外乱闘が始まった。逃げ惑う観客たちのド真ん中でパイプ椅子が振り下ろされ、まさに会場は阿鼻叫喚の地獄絵図。
 客席の椅子がリング上に積み上げられ、行き場を失った観客たちが右往左往する最中、ターザン後藤が相手を丁寧に並べた椅子の上に寝かせつけ巨体を駆使してダイブ、息も絶え絶えになったところをフォールして3カウントを勝ち取った。
 ラストのマイクパフォーマンスでは「お前の老後の面倒はオレが見てやる」とポーゴに求愛とも解釈できる発言をし、おもむろに手にした蛍光灯を頭でカチ割り、自身の胸を割れたガラスで傷つけはじめた。
 かつてはいざこざもあり、つい最近もプロレス雑誌に悪口を書かれるなど、単純にタッグを組める間柄ではないものの、積み重ねた年月と想い出が、二人を感傷にひたらせるのか…リング上に哀愁が漂い、何とも言えない空気が流れ始めたところで客席から「もう、いいよ後藤!」と声が掛かった。

 もはやプロレスが「筋書きのあるドラマ」であることは周知の事実となりつつあるが、リングの外側にはドラマが満ちあふれている。単なる流血パフォーマンスのウラ側にも、言葉にならない「熱い思い」が込められているのだろう。
 末期状態に近いこの不況下において、かつての人気バンドが経済的理由から復活を余儀なくされるケースが音楽界では数多いが、プロレス界もその例外ではなく、これまでに数多のレスラー、団体が廃業とカムバックを繰り返している。スーパーFMWの復活も、その一つと受け取られても無理はないだろう。
 だが、スーパーFMWには新たな伝説の息吹を感じる。激動の荒波に身を置かずにはいられない男の性が、旋風を巻き起こしてくれるに違いない。
 ちなみに会場ではターザン後藤の使用済みコスチュームが3万円で販売されていた。最後まで売れ残っていたので、興味のある方は次回の興行でゲットしてみてはいかがだろうか。念のためスタッフに尋ねてみたが、洗濯してあるのかどうかは定かではない。

◆真・ターザン後藤一派公式サイト
http://www3.hp-ez.com/hp/tgoto/

(「亡国コラムニスト」犬山秋彦 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

関連記事

関連画像

もっと見る


スポーツ→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

スポーツ→

もっと見る→

注目タグ