「ある程度、覚悟は出来ていたんじゃないかな。大久保(博元=48)監督が二軍落ちを示唆していたので」(現地記者)
失意はないとする見方も聞かれたが、二軍合流初日(14日)、追い打ちをかけるような処遇にも見舞われた。ブルペン投球のお預けである。
「期待されているから突き放した言い方をされたんだと思いますが…」(チーム関係者)
酒井勉二軍監督(52)は「今日はいいからな」とブルペンでの投球練習をさせなかった。この時点で、安楽の練習はどこも故障はしていないのに別メニューとなった。入団会見で、新人王獲得宣言までした黄金ルーキーにとって、これ以上の屈辱はない。
「高校時代の連投による疲労も、酒井二軍監督は口にしていましたが、本当の狙いは発奮させることと、投球フォームの乱れを修正させるためです。高校2年時に安楽は右肘を故障しましたが、故障前と故障後で投球フォームが違うと。本人は気づいていないみたいですが、そこが分かるまでは投球練習をいくらやっても無駄だと…」(前出記者)
この突き放して本人に気づかせる教育は楽天流でもある。田中将大もルーキーの年に自慢のストレートで通用しない場面があった。野村克也監督(当時)はどこを修正すべきか分かっていたものの、本人が気づかなければ、いくら口で説明しても身につかないとし、あえて、実戦マウンドで敗北も経験させた。
楽天の期待値の高い新人は洗礼を浴びており、ここからまだ這い上がってこられないでいるのが、松井裕樹(19)というわけだ。
大久保監督はキャンプ序盤から安楽の二軍降格を示唆してきたが、こんなことも口にしていた。
「挨拶がなってねえ!」
きちんと立ち止まって挨拶をする。これが、大久保監督の教育方針である。だが、安楽は時折、歩きながら「チワ〜ス」とやってしまうらしい。
「序盤から二軍降格を示唆していたということは、最初から一軍で使うつもりはなかったわけです。二軍スタートでやらせてやれば、精神的に落ち込まずに済んだはず」(ベテラン記者)
悪癖を本人に気づかせることと、精神的に追い込むことは違う。
キャンプ序盤の2月6日、安楽はストレートが走らず、ブルペン投球の練習中に顔をしかめる場面があった。安楽を担当した山下勝己スカウトが頃合いを見て近寄り、その態度を注意した。プロ1年目の疲労によるものだ。大久保監督は先の歩きながらの挨拶を指して、「2回やった。オレたちはそういうところを見ているんだ」と報道陣にこぼしたが、安楽の疲労は体力面ではなく、メンタル面からきているのだとしたら。
あまり追い打ちをかけるような言動が続くと、立ち直れなくなってしまうかもしれない。