興毅が悲願の2階級制覇に王手をかけた。
前哨戦をステップに王者デンカオーセンとのタイトルマッチを狙っていた。当初は6月の世界タイトル戦をもくろんでいたが、王者側の2人のマネージャーがそれぞれ別の相手とのタイトル戦をブッキングしていたことが判明。同時に挑戦者が2人存在するという異常事態が発生した。
亀田プロモーションの亀田史郎社長と亀田ジムの五十嵐紀行会長がタイに渡り、王者サイドと交渉を試みたが難航。WBAに判断を委ねた。
結論が出ないまま迎えたWBCフライ級20位、ドローレス・ビダルとの一戦。試合前1週間で一気に体重を減らし、軽量後に大食いをしてリバウンドで体重増を狙う新たな減量方法で臨んだ。「あれ以上食ったら吐いている。ギャル曽根にはなれへんかった」と作戦は不発に終わったが、試合ではその影響を感じさせない動きを披露した。
1Rから足を使い距離を詰めると左ストレート、左ボディーなどで攻め立て圧倒。2Rに入っても相手に何もさせない。左右のパンチの連打でダウンを奪うと、波状攻撃。左アッパーで2度目のダウンを奪い、最後は2分9秒、左右の猛ラッシュから左ストレートでKOした。
約1年ぶりの国内での試合を白星で飾り「次、世界タイトルマッチが決まったら絶対に獲るよ。男やから嘘はつきません。ベルトを獲るんで応援よろしくお願いします」。詰め掛けた3000人のファンに2階級制覇を約束した。
前哨戦という第一関門を突破。残すはデンカオーセンとの交渉のみ。史郎社長は「次は確実にデンカオーセンとやる。6月になるか7月になるかはまだわからん。ただ、金額も提示したし、条件を変えるつもりもない。それで(王者側が納得せず、試合が)できなければ9月(の指名試合)まで待つ」とタイトルマッチ挑戦を明言した。
交渉の妨げになっていたマネージャー問題は解決に向かっている。マネージャーのナリス氏が2日、日本ボクシングコミッション(JBC)の安河内剛事務局長と会談し、経緯を説明。もう1人のマネージャー、ニワット氏に金銭面や条件面を譲渡することで、興毅との防衛戦を実現させる旨を伝え帰国したという。
「世界戦をするという気持ちで練習していく。これ以上待ったら賞味期限が切れる。腐ってしまう」。タイトルマッチ挑戦を今かと心待ちにしている興毅。2階級制覇に向けて視界が開けてきた。