“求道妖怪”入道が、師・夢路から初勝利を挙げた記念すべき瞬間は、東京で一番暑い場所で訪れた。
毎年恒例となりつつある灼熱地獄、真夏のCORE STADIUM。歌舞伎町ラブホテル街の地下に、ひっそりと身を隠すようにたたずむ地下戦士養成所は、日々ストイックな特訓により選手たちが体を鍛え上げる場所。
「そんな所にエアコンなんてとんでもない。意味がない。考えられない!!」と、声を荒げるのは新宿ジム代表、“歌舞伎町の不死鳥”RIKIYA。
加えて壁、天井をすべて黒いペンキで塗り尽くした狂気の漆黒密室は、殺人級の保温能力をもつ空間なのである。
さらに、その地獄に続々と集まってくる地下闘士たちの異常な熱気。特に、地下組織の本拠地・フランスより今回招集メールを受け取った参戦選手たちは、誰をとっても肉厚系。平均体重95キロの男たちが奏でた格闘狂想曲は、フィリピンからの指名演武人J.S.Ramisの「ダラブッカ」なる膜鳴楽器の波動音により幕を開けた。
第1試合、夢路&小笠原組と高岩&入道組の一戦。重厚なレスリングを展開する夢路と高岩に、ますます絶好調の驚異の51歳・小笠原和彦の蹴り技。そんな中に入って入道は、激情的に一直線に攻め込み、夢路の頭突きと関節複合技に潰された。今まで地下の激闘史の中で幾度となく繰り返された地獄絵図である。
Ishtariaのベリーダンスを挟み第2試合がリングアナウンサーのミスター雁之助から発表されると、場内はザワついた。それは、第一試合とまったく同じカードだったのだ。そしてまたしても入道は、夢路の“世界一”の頭突きに豪快にKOされた。
さらにJ.S.Ramisのダラブッカ演奏を挟んだ第三試合も、またしても同じカード。異様な興奮が場内を包む中、口から血を垂らし、目がうつろな入道はなおも突進を繰り返す。ある意味、必要以上に“ものわかり”と“あきらめ”が悪い入道の奮闘に、パートナー高岩も強烈すぎる援護射撃。豪腕ラリアットで夢路をとらえ、必殺のデスバレーボムをCORE STADIUMの薄いマットで炸裂させてから入道に繋ぐ。入道はここぞとばかりに得意のセントーン。しかし夢路も“バンプマン”の意地を見せつけ受けきって、なお死なず。そして変化をつけた“地を這う頭突き”の連打で反撃に転ずる夢路。苦闘の中でひらりとよけた入道の巨体は、自らの自信技「キャメルクラッチ」の体勢に入っていた。
これがガッチリと決まり、腰に爆弾を抱える夢路がたまらずタップ! この瞬間、地下の客席が、なんともいえない喜びの歓声に包まれた。それはいつ来るやも知れなかった入道の“成長”の瞬間だった。
何度も客席に向かって勝利の雄叫びを挙げる入道。空がないはずの地下に力強く“入道雲”が立ちのぼった。
メインイベントでは若き阿吽王者・竹嶋に、“JAPANEASE OSYO”の異名をタイ地下プロレスに響かせ大ブレイクした日龍が挑戦。前回の対戦では竹嶋にブチ切れ“キラー和尚”の一面を覗かせた格闘僧侶の、満を持した挑戦だ。一方、竹嶋はパートナーの矢野が今月に入って「消息を断つ」という非常事態の中での防衛戦。矢野のいない間、一人で阿の帯を守り続けることができなければ“兄弟タッグ”とまでいわれた矢野とのチームを解消しなければいけなくなる。ここは、なんとしてでも守りきり矢野の行方を探しあてなければと、竹嶋は使命感に燃えた。
試合はレスリングをベースにした竹嶋と、柔道をベースにした日龍の息詰るグラウンド合戦に終始した。三州ツバ吉と長きに渡り防衛を重ね、梅沢菊次郎とは“肉弾坊主コンビ”で猛威を震った前王者・日龍の阿吽の帯に対する思い入れは強い。竹嶋はそれを一瞬の片羽締めで断ち切って、防衛を果たした。
奇しくもコアスタジアムでシゴかれ、しのぎを削り合い、成長を重ねた二人。入道と竹嶋が勝者として輝いた真夏の夜の地下だった。そして全試合終了後の計量で、6選手が合計12kgもの減量を達成していたという結果にも驚きだ。
全試合結果は以下の通り。
◆地下プロレス『EXIT-79 CORE:Y』
2011年7月10日(日)開始:18:00
会場:東京・新宿歌舞伎町「CORE STADIUM」
<第1試合>
○富豪2夢路、小笠原和彦(13分28秒 コブラツイスト)高岩竜一、●入道
<第2試合>
○富豪2夢路、小笠原和彦(4分48秒 KO)高岩竜一、●入道 ※頭突き
<第3試合>
高岩竜一、○入道(7分32秒キャメルクラッチ)●富豪2夢路、小笠原和彦
<メインイベント 地下日本阿吽選手権>
[王者]○竹嶋健史(11分14秒 片羽締め)[挑戦者]●日龍
※竹嶋が保持する「阿の帯」が懸けられる。
※竹嶋が阿の帯防衛に成功。
※試合はすべて時間無制限一本勝負。KO、ギブアップのみで決着。
地下プロレスtwitter
http://twitter.com/Chika_Wrestling
地下プロレス データベース
http://www43.atwiki.jp/wuw-exit/
梶原劇画で伝承された「地下プロレス」が、この日本に存在した! 闇の闘いを伝える『EXIT』とは何か!?
http://npn.co.jp/article/detail/97320773/
“三冠王者”紅闘志也凱旋、新・阿吽王者に矢野啓太&竹嶋健史… 6・12 地下プロレス『EXIT-77 CORE:X』
http://npn.co.jp/article/detail/48536560/
果てしなく続く「入道 vs 竹嶋」 …地下の聖地CORE STADIUMに、また新たな伝説が加わった
http://npn.co.jp/article/detail/67554880/