それを知ってかどうか、渡邉会長は最近、体調を崩しているという。「ようやく数日前に効く抗生物質を見つけたが、全然食欲がない。体がダメだから、世の中の難しいことは白石君(興二郎オーナー=読売新聞グループ本社社長)に任せている。コミッショナーのことを考える意欲も湧かない。みんなで決めてくれ」と、この人には珍しく弱音を隠さない。
「中日が落合体制に戻すことが影響しているのでしょう。新聞の部数にも関わることですから」
と思いやるのは、読売新聞グループの幹部社員だ。
「今や1000万部を超す世界一の発行部数を誇る読売新聞ですが、どうしても切り崩せないのが、愛知、岐阜の東海2県。いずれもシェアは約3%です。沖縄県以外では、ここだけぽっかり穴があいている。このエリアは6割強が中日新聞の購読者。しかし幸いなことに去年、今年とドラゴンズが低迷し、巨人が連覇したことで兆しが見えてきた。そこで『さあ、一気にナゴヤに切り込むぞ』と盛り上がっている真っただ中に、落合監督の復帰報道が出た。彼の指導者としての能力を誰よりも高く評価しているのが渡邉会長。してやられたという思いが、体調にも影響しているのでは」
実際、昨年のWBCの日本代表監督選定の際も、「落合君しかいない。他にいますか? 中日を強くしたし、軍師としての采配力は日本一。12球団を統括する貫禄のある人は他にいない」と推奨し、'07年に原巨人が5年ぶりにリーグ優勝して臨んだCSで落合中日に3連敗を喫した際には「ベンチワークが敗因。落合の方が頭が良かったんじゃないか」と、敵将の落合監督を褒めちぎってもいた。
ここ2シーズンの巨人は、高木守道監督にスイッチした中日を難なく退けているが、その前の落合監督時代8年間のリーグ優勝回数は、巨人3回に対し中日4回と、数字以上にやられ放題の印象が強かった。
中日は、次期監督候補でもあった鈴木孝政二軍監督をはじめ、宇野勝総合兼打撃コーチ、高橋三千丈投手コーチ、川又米利打撃コーチ、前原博之内野守備走塁コーチ、早川和夫育成コーチに来季の契約を結ばないことを通達した。中日OB会の最高首脳でもある高木守道監督の直系、星野仙一元監督の息のかかったコーチたちをまとめて一掃したのだ。
このように中日は、再建に向けて着々と準備を進めている。さらに見逃せないのが、一緒にBクラスに沈んだ横浜、ヤクルトへの呼び掛けだ。巨大な戦力を持つ巨人を倒すため、水面下で連携を打診しているのである。
「ヤクルトに対しては、『原監督が苦手とする落合を再登板させるので、おたくも野村ID復活で一緒に巨人を倒そう』と。戦力的には太刀打ちできない以上、頭脳で対抗しようという共闘の呼び掛けです。横浜サイドには、昨オフの外国人3選手に続き、『ウチの余剰戦力でよければどうぞ』と促している。今季で退団する川上憲伸投手の譲渡も打診しているといいます。いずれも目的は一つ、巨人を打ち負かすためですよ」(中日OBの解説者)