<“声優の難しさ”を考えてみて>
「声優になりたいと思うんなら、まず皆さんが一般的に考えている“声優”という職種に関する認識を改めて下さい。もしかして声優は声だけだから、台本を片手に演技をする為、セリフを覚える必要がなく、普通の芝居と比べて簡単などと思っていませんか?
声優ブームと言われる今日においては、仮にもお芝居をする業種であるにも関わらず、声優志望の子たちの志があまりにも低く、そして声優というものを大きく勘違いしています。
是非皆さんにお勧めしたいのは、何でも構いませんので、まず自分で好きな作品のアフレコ用のセリフだけの台本を作って、映像を音声を消した状態で再生する、それに自分の演技をアテながらテープレコーダーなりで録音し、試してみなさい。完成した絵があっても相当に難しいことがすぐに体感できる筈です。そして、実際の現場ではまず色つきの絵が上がってくることは殆どと言って良い位ありません。こんな状況で芝居をする事が果たして楽しいか? 単なる夢想だけでなく、仕事としてやっていきたいのであれば、リアリティを持った考えと意識を持って門を叩いてもらいたいですね」(現役声優兼養成所講師)
<声優になろうと思うな!?>
「こういうことを言ったりすると、養成所とか声優関係の雑誌からいい顔されないから全然表でいう機会がないんだけどね(笑)。僕なりのいいアドバイスを差し上げたいと思います。
声優として大成したい、長く声優の仕事で食べていきたいと考えるなら、“声優になりたい”という意識を根本から捨てることです。
このフレーズだけを聞いたら、声優志望の子たちは一体何を言ってんだこの人、って思われるかもしれませんね(苦笑)。詳しくご説明いたします。
今日の声優のあり方は、一昔前とは随分と変わっており、特に主演の若手の皆さんはイベントやステージに立つだけでなく写真集やCDなども出す、ある意味ではかつてのアイドルと同じようなポジションになりつつあります。つまり、単に声に特徴があったりするだけではなく、第一にルックス、その他話術や歌唱力など様々なスキルを要求されるわけです。
そして、またそうした人気や興味はとても移り変わりが早い。声優の仕事を長く続けて行きたいと思うのであれば、俳優としてタレントとしても活躍できる意識と素養を身に付けている人が強いんですよ。山寺宏一くんがとても良い具体例かな? 彼は凄い。きっと声優の道に進まなかったとしても、何かしらの他の様々な分野において名を馳せたと思いますよ。
それから、声優のキャスティングも最近は芸人さんや顔出しの俳優さんが結構多くなりましたでしょう? 単純にプロデューサーとかクライアントがバカというのか、考えが浅はかという事情も多いですけれど、ただアテレコしかできないスタジオ専門声優の時代は終わりつつあるんです。
声優の世界にチャレンジする前に、自分なりにシミュレーションしてみて下さい。果たして自分は現在キャスティングされている人たちの様に、アテレコ以外に何を武器=売りにして生き残っていけるだろう、と。
これは声優に限らず、芸能界全体に言えると思うんですが、やはりビジョン=視野を広く、芸の引出しを多く持った人こそ強く、長く業界で生き残っていけるんですよね」(声優関係・芸能プロダクション関係者)