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西田隆維のマラソン見聞録 第4話「スポーツ選手活用体力向上事業」

 7月7日、日本体育協会が文科省より委託を受け実施される「平成23年度スポーツ選手活用体力向上事業」陸上教室の講師として岩手県岩泉町の小川(こがわ)中学校へ。当日は早い時間からの授業だったので前日より現地に入り、日本の三大鍾乳洞のひとつ【龍泉洞】へ行った。

 湧水をそのまま飲めるほど水がとてもキレイで、鍾乳洞の名とその水の透明度から『ドラゴンブルー』と呼ばれているそうだ。国の天然記念物に指定されるように、とても素晴らしい鍾乳洞なので是非一度は足を運んでいただきたい場所でもある。

 小川中学校は全校生徒63名。数人は見学であったが、ほぼ全員がこの授業に参加した。スポーツクラブやサークルでは、ある程度やる気や知識もあるが、全校生ともなると運動の嫌いな子や苦手な子もいるので、どのようにしたら興味を持ってもらえるのか? というのが、まず第一の課題だ。マラソンはわかっているようで、わかっていないことが多い。ムダな情報ばかりが目立ち、型にはまることにこだわって楽しめないのではないか…と感じていた。

 まずは20分間の講話。「記録を出したりする選手はカッコよく見えるけど、その陰では小さな努力の積み重ねがある。自分はマラソン選手としてオリンピックを目標としてきたが結果的には叶わなかった。しかし、ほかの道でその努力や、がんばりは生かされているので、投げ出さないことが大切なのだと──」そう話す私を生徒たちは食い入るように見つめている。純粋、無垢──。そんな言葉を感じさせられた。

 次の実技では、誰にでもできるトレーニングから始めた。おしゃべりできるくらいのペース(市民ランナー用語にすれば“ニコニコペース”)での走り5分→歩き5分。その後10分軽く走って、短い距離のウィングスプリント(ダッシュの7〜8割の速さ)2本。少し休んで、ウィングスプリント90秒間→おしゃべりできるペースで90秒間。このような段階を踏んだトレーニングによってムリすることなく走れる状態になる。何だかゆるいメニュー…。マラソンらしからぬやり方と思われるかもしれないが、重要なのはペース配分。わかりやすい基準を示してあげながら、まずは『スポーツ=楽しい』と感じてもらえることが先決だ。

 彼らからは思っていた以上に、吸収しようとする力を感じた。私の伝えたいこと、やってほしいことを察し、期待をはるかに超え「とりあえずトライしてみよう!」という前向きな意思を感じた。大人になるとつい色々と面倒になったり、おろそかになったりするが、彼らのハツラツとした笑顔と、まっすぐな瞳に忘れかけていた大切なことを教わったような気がした。

<プロフィール>
西田隆維【にしだ たかゆき】1977年4月26日生 180センチ 60.5キロ
陸上長距離選手として駒澤大→エスビー食品→JALグランドサービスで活躍。駒大時代は4年連続「箱根駅伝」に出場、4年時の00年には9区で区間新を樹立。駒大初優勝に大きく貢献する。01年、別府大分毎日マラソンで優勝、同年開催された『エドモントン世界陸上』日本代表に選出される(結果は9位)。09年2月、現役を引退、俳優に転向する。

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