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高橋四丁目の居酒屋万歩計 「ポパイ」(ビアホール)

 JR総武線・両国駅から徒歩350歩。都営地下鉄大江戸線・両国駅から徒歩410歩

 大相撲は年に6場所。うち、初場所(1月)、夏場所(5月)、秋場所(9月)が東京は両国国技館で開催される。蒼天の5月半ば、鬢(びん)付け油のにおいを風に残す大柄の男たちと擦(す)れ違うのは、ひとつの好もしいタイムスリップである。
 相撲は神事であり、勧進相撲にも美学は貫かれ、大銀杏を結った回し姿を最高度の正装とする力士たちは、かつては“一年を十日で暮らすいい男”なのであった。遠からぬ未来、最後の宇宙船が地球を脱出するときに、彼らが搭乗できるかどうかは疑問ではあるけれど、しかしなるほど女であればその腕(かいな)にぶら下がって浅草見物でもしてみたいものだと、彼らの親父のような歳をしてそう思わなくもない。
 巨魁(きょかい)の大部分は筋肉と、そう言われてもやはり外見はでぶであることを否めない男たちは、顔も美男とはいいがたくもそれはそれで魅するところがあって、たとえばまだ結びの一番に間のある陽も高い夕刻に、すでに出番の終わった浴衣姿の相撲取りが3人、一列縦隊でコンビニのローソンに入っていくなぞは初夏の両国風物詩そのものである。“土俵のシャンソン”相撲甚句は唄う。<♪五月 あやめに かきつばた>

 両国には初代国技館(1909年6月2日開館)があった回向院がある。吉良邸がある。したがって赤穂義士元禄義挙の跡というものがある。塩原太助住居跡がある。斎藤緑雨住居跡がある。芥川龍之介住居跡がある。そして出羽海部屋、春日野部屋、立浪部屋、井筒部屋が現国技館を囲んでいる。ビアホール「ポパイ」はそんな風景に、ひとりぽつねんとある。
 ライトエールのエチゴビールは、ポパイ特製オリジナルマグカップ(500ミリリットル)で供される。唇の裏に残った突き出しの茄子(なすび)の煮浸しの油分を、エールが引き潮のように拭(ぬぐ)い去る瞬間がなんとも官能的。本日のビールメニューなるA4の紙が卓にあって、眺めるにたぶんどれを飲んでも旨かろうし、しかし全種類をいただくわけにもゆかないので2杯目には店第一等の変わり種をと注文すると、供されたのがIPA種(INDIAN PALE ALEの略。説明は店の青年男女にお聞きください。店長の青木氏は別格としても優秀なスタッフです)の中でも最強のマッドリバー・スチールヘッドIIPA(MADRIVER STEELHEAD DOUBLE IPA)。アルコール度数8.6%の「凶暴な河に鉄兜×2IPA」という恐ろしげな名に怯(おび)えることなかれ。質朴なコップに盛られたそれは新鮮この上なく、滋味深く、ビール専門店ならではの品揃えを愉(たの)しむことができた。
 普通のビールを、と最後に所望すると、三重県の伊勢角屋麦酒のブラウンエールを薦められた。明らかに日本の地ビールの水準が高まってきていることを実感する。ちなみに最初の1杯目、エチゴ(越後)ビールが日本の地ビールの草分けなのでした。
 <♪どすこい どすこい 又のご縁があったなら 再び当地に参ります>

予算3000円
東京都墨田区両国2-18-7

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