いったい何が起ころうとしているのか。まずは、その背景を全国紙政治部記者が説明する。
「今回の衆院選の分析がマスコミ各社で進む中、公明党に関して衝撃の数値が出ているのです。ひと昔前は、比例区で1000万票獲得の目標を掲げていたほどだったのですが、ここ10年で選挙のたびに激減。そして今回も、697万票に終わった。加えて、小選挙区でも大苦戦。特に自公協力を強烈にアピールしてきた“影の総理”とも呼ばれる菅義偉官房長官、自民党の人寄せパンダ、小泉進次郎筆頭副幹事長のお膝元・神奈川がひどい。6区では、当選7回の上田勇氏が敗れてしまった。菅・進次郎氏が応援に駆けつけても、立憲民主党から立候補した青柳陽一郎氏には勝てなかったわけです」
青柳氏は8万6291票、片や上田氏は、約3500票差の8万2788票で、公明党は他の地区でも立憲民主党に苦戦を強いられていた。さらに、公明党候補が出馬した小選挙区は、無効票率が全国平均に比べ極めて高い傾向がある。
「前回の'14年に行われた衆院選でも顕著だったのですが、とにかく公明党候補が立つ選挙区は無効票が多い。金城湯池と言われる大阪府では、'14年時の3区は15.3%、5区14.9%、6区12.4%。他の大阪府の選挙区は平均2〜4%です。今回の衆院選でも全国の無効票率の平均が約2%台だったのに対し、やはり大阪3区をはじめ同様の選挙区は8%〜10%だった」(同)
この原因は、すべて公明党を支える創価学会票の激減と見られているのだが、なぜこのような事態になっているのか。
「学会票が立憲民主党に流れてしまったことは間違いなく、立憲民主党に投票しないまでも、公明党には投票せず無効票になったということ。加えて、特に大阪などでは、自民党寄りの票が公明党に入っていないことも考えられる。つまり、自民党と連立を組む公明党への創価学会員の無言の抵抗と、今や自民党と組んでも意味を成さないことを表している。今後、さらに自民党の狡猾さが出れば、この動きはますます拡大するだろう」(公明党関係者)
元創価学会関係者は、内部で公明党批判が急増する理由を、「自民の雪駄の雪と化した姿勢だ」と指弾する。
「'14年には、安倍政権が自衛隊の集団的自衛権の憲法解釈を拡大した閣議決定を許してしまった。その結果、同年の衆院選で公明党が立候補した選挙区の無効票が増えてしまったのです。翌'15年には、自衛隊の戦争参加の道筋をつけたとも評される安保関連法に賛成し、これがさらなる猛反発を生んだのです」
創価学会は“平和運動”を標榜に、創設者で初代会長の牧口常三郎氏、二代目の戸田城聖氏、三代目の池田大作氏らの奮闘で発展を遂げてきたが、その根底を覆す公明党の姿勢に、我慢の限界が来ているという。
「歴史の影には、会長たちの数えきれない苦難があった。その学会、学会員の支援で、公明党は都議会や国会で勢力を拡大してきたのです。しかし、それが今や、“平成の治安維持法”とも揶揄される、いわゆる共謀罪にも賛成し、いまだに国民の多くが疑惑を拭えない森友・加計学園問題についてもスルーですからね」(創価学会関係者)
そんな公明党では、特に創価学会内でも影響力を持つ婦人部の間で、急速に批判が強まっているとされる。
「衆院選投開票日には、創価学会本部前に、数十名の元、現学会員らが安保法制、共謀罪反対の横断幕を掲げサイレントデモを展開している。これは度々行われているのですが、同調の声が次第に広がりつつあります。そうした状態のところへ、突如として平和主義の堅持を主張する立憲民主党が現れたのです」(同)
そこで今後のポイントになってくるのは、公明党が以後の国会で最大の焦点となる改憲でどう動くか、そして、その対応を見ての枝野氏の動きだという。
「山口那津男公明党代表は、改憲には慎重姿勢を見せ自民党をけん制している。しかし、安倍首相は本来は集票力を持つ公明を手放したくはないが、あくまで強気のやり口で希望の党+日本維新の会との合流をチラつかせ揺さぶるだろう。枝野氏としては、それが自公政権を分断する好機となる」(枝野氏周辺関係者)
枝野氏は、11月2日、国会内での結党の挨拶まわりで、山口氏に「御党が一番近いテーマもある」、さらに国会運営について「公明党の力にかかっている」と声をかけている。
「枝野氏は山口氏に対し、党内部が混乱し始めていることに同情する姿勢を見せつつ、したたかに連携を持ちかけるだろう。ただし、そもそも枝野氏は自ら語っているように護憲派ではない。結局、最大の目標は安倍政権潰し。そのために公明党を飲み込もうとしているのです」(同)
エダノンの攻勢が始まりそうだ。