「もともと女優活動を軸にして、バラエティに出演させていただいたり、グラビアもやらせていただいたりしました。バラエティの場合、この人はボケ役でとか、この人はみんなの意見をまとめる役でとか、分かりやすく役割分担を割りふられる。私の場合、そのうち毒舌ってキャラが出来上がった。カンペも出て、その指示を受けて喋ったら盛り上がる。みんな笑って、オッケーってなる。ドラマと同じ、吉野紗香という役を演じていたという感覚でしたね」
しかし、ドラマと違って、バラエティの場合は演出と本音の境目は分かりにくい。そこにバラエティの難しさがあると、吉野は語る。
「自分の発言が、番組で盛り上がってくれると嬉しいですよ。そこで言えるか言えないかで、売れるかどうか変わってくるのが芸能界なので。私はやっぱり売れたいっていう思いは強かったですね。ただ、その発言が世間で騒がれると、影響力の大きさに怖気づいて、そのうち話すのが怖くなってしまったところはあります」
毒舌キャラを演じるのに躊躇したのが、バラエティから去った本当の理由だと振り返る。しかし、女優としては今もなおコンスタントにドラマや舞台、映画に出演しており、3月8日から全国公開される『ゼウスの法廷』(高橋玄監督)が最新出演作となる。これは日本の裁判システムに深く切り込んだ社会派映画だという。
「この映画では刑事被告人となるヒロイン(小島聖)の親友役を演じているんですけど、法廷で証人として出るシーンがあるんですね。そこで検事さんが、被告人の不利になるようなことを証言させようと仕向けてくるんですよ。自分としては被告人をフォローしようと思っているのに、それにのせられてしまう。そこは、バラエティの世界でも、自分としては盛り上げようと言ったことが、世間では吉野紗香があんなことを言っていたって騒ぎになることがあるので、似たところはあると思います」
法廷の一言は、被告人の人生を変えるが、バラエティの一言は、芸能人生を変える。「女優」吉野紗香は、本音で語ってくれた。
(井川楊枝)