ワースト記録更新中の東大野球部は、なりふり構わず、補強を敢行している。しかし、プロ野球とは違い、トレードや外国人選手の獲得はままならず、コーチ陣のテコ入れに活路を見出そうと躍起になっているのだ。
「横浜高校野球部コーチの小倉清一郎氏(70)をスカウトしたのには驚いた。あの松坂大輔を筆頭にロッテの成瀬善久、涌井秀章、DeNAの筒香嘉智を育て上げた名伯楽です。今年8月31日に退任するのを待って即、獲得した。何が何でも秋季リーグに間に合わせたかったのでしょう」(全国紙の運動部記者)
これで投手部門の桑田真澄コーチ(元巨人)、打撃部門の谷沢健一コーチ(元中日)に作戦部門の小倉氏が加わり、赤門トロイカ体制が完成。“慶応、かかってこい”というわけだ。
東大野球部は春季リーグ5月25日の法大戦で76連敗目を喫し、自らが持つ連敗記録を更新。最後に勝ったのは2010年秋季リーグの早大戦。相手投手はあのハンカチ王子、日本ハムの斎藤佑樹だというから面白い。それ以来、入り込んだトンネルから抜け出せないでもがいている。
「船頭多くして船山に登る。桑田が加わったことで、選手たちは混乱しているのです。東大にはスポーツ推薦枠や系列高校がなく、他大学とは体力や経験が違う。そこでひたすら練習し、専門書やビデオで学習して補ってきた。ところが桑田は、やれ練習時間を減らせ、やれ専門書にとらわれるな、と持論を押し付ける。それも毎日指導に足を運んでアドバイスを送るならいいが、月に数回顔を出して、自分はこうだった、こうした、と話して帰るだけ。PL学園の天才投手が成功したからといって、それが東大野球に通用するはずがない。見かねたOBたちが高校野球に目を付け、桑田を抑えるべく小倉コーチを担ぎ出したのです」(東大野球部関係者)
小倉氏は横浜高、東京農業大、社会人野球に進み、東海大第一高校と横浜商業高校でコーチを務めた。横浜高では、同級生の渡辺元智監督とコンビを組んでからは部長に転身。
「横浜高は渡辺監督が精神面や規律の指導を行い、野球技術は小倉氏が教えていた。東大野球部の体力や技術レベルはほぼ高校生。その目線で鍛え直そうとしているのです」(前出・記者)
西の横綱だったPL野球から東の横綱の横浜高校に宗旨替えした東大。果たして、長いトンネルから抜け出すことができるか。けだし見ものである。