水を打ったように静まり返るゴング後の後楽園ホール。その中で坂田とジェットはお互いの意地を確かめるかのようにグラウンドで腕を、足を取り合う。坂田がジェットの腕を取り返し、逆十字の体勢に入りそうな所で局面は変わる。膝で坂田の顔を踏みつけたジェットは坂田の顔面目掛けてパンチを振り下ろす。そこからスタンドの状態となり、チョップをお互いの胸板に叩きつけていく両者。坂田の逆水平を食らいながらその場飛びのドロップキックを放つジェット、コーナーに坂田を追い詰めてミドルキックを連打する。更にロープに飛ばしてランニング・エルボーパッド。坂田をぶっ倒して試合のペースを掴もうとするジェット。
だが坂田の牙城はそう簡単には崩れない。ジェットのミドルキックをキャッチすると膝にエルボーを振り下ろす。そして「キックっていうのはこうやって打つんだよ!」とでも言うようにジェットの胸板にミドルキックを叩き込む坂田。ダウンするジェットにストンピング、立たせて逆水平、ロープに飛ばしてスロイダーと、ジェットの体にたたみ掛ける様な連続攻撃をお見舞いする。続いて首筋へのニードロップ、フロント・ハイキックを繰り出していく坂田。坂田の猛攻に反撃の糸口が掴めないジェット。しかしジェットの目は死んでいなかった。
フロント・ハイキックの三発目を見舞おうとロープに走る坂田。そこにジェットはカウンターの張り手を合わせる。思いもよらない攻撃に一瞬坂田の上半身がぐらつくと、すかさずコーナーに登ったジェットが美しいフォームのダイビング・ボディーアタックを見舞っていく。馬乗りの状態になり、パンチを振り下ろしていくジェット。
坂田が背中を見せようとするとスリーパーホールドでグイグイ絞め上げる。ジェットを背負った状態で立ち上がった坂田はそのまま叩きつけるが、ジェットはスリーパーを離さない。それどころか更に坂田の頚動脈を絞め上げていくジェット。坂田の表情が苦しみに歪んでいく。再度立ち上がった坂田に対し、ジェットはジャーマンの体勢に。踏ん張る坂田の後頭部にヘッドバットを叩き込み後ろに放り投げる。
死中に活とはこの事だろうか。ジャーマンで叩きつけられた瞬間体勢を入れ替えた坂田はジェットの腕に絡み付いてアームロックを極める。そこから逆十字に移行するがジェットはロープに逃げる。再びスリーパーに入ろうとしたジェットに対して坂田はバックドロップを三連発。前回の対戦でも大きく戦局を変えたこの攻撃にガクッとペースを落とすジェット。ここからはほとんど坂田のペースで試合は続けられた。胸板へのミドルからローキックのコンビネーション、ジェットの張り手連打には掌打の速射砲、コーナーに詰めたジェットにミドルの連打、ボディーブローからダイビング・フットスタンプ…歯を食いしばって耐えるジェットに対して情け容赦ない攻撃を加えていく坂田。
追い討ちの逆片エビ固めで絞り上げる坂田。もはやこれまでかと思われたが、セコンドの旭志織がエプロンから激を飛ばす。その声が聞こえたのか何とかロープに手を伸ばしたジェットだったが、続いて放たれたドラゴン・スープレックスからのスーパーキックの前にカウント3を奪われた。二度目の対戦はまさしく坂田の圧勝で終わる。
「悔しいか、ジェット!」坂田の言葉がジェットの胸にグサリと突き刺さる。立ち上がり「(勝てなくて)すいませんでした!」と叫ぶジェットには館内から「謝るくらいなら大きな事言うな!」と厳しい言葉も飛び交う。しかしジェットの覚悟を全身で受け止めた坂田は健闘を称えるかのように、締めのハッスルの音頭をジェットに託す。ハッスルMAN'Sワールドはこれで新たなる出発を始める、そんな暖かい空気が会場を包んだ、その時だった−。
「ヒクソンと闘った男」木村浩一郎と、アパッチの再発進を告げた金村キンタローがそのリング上に姿を現したのはその瞬間であった。坂田とジェットに詰め寄る木村と金村。金村の持って来たパイプ椅子が坂田に叩きつけられた瞬間、収拾不可能となる大乱闘が勃発したのであった。慌てて飛び込むセコンド陣。その中にはSTYLE-Eの柴田正人やKAIENTAI-DOJOの旭志織の姿も。そんな事はお構いなしと暴れまわる木村と金村。坂田に対して「どっちがやりたいんだ!」と凄む木村、その言葉の意味は後日明らかになる。
木村は後日のコメントで「坂田、お前は何がやりたいんだ? ハッスルってのは割り切ったエンタメじゃなかったのか? それが今になって『プロレスは強くなきゃいけない』って坂田もハッスルの小僧(ジェット)も言い出してるだろ。プロレスに必要な強さを坂田は勘違いしてるんじゃないのか? 楽な試合ばっかりやってきたんじゃないのか? 偉そうに言うんだったら受けてみろって。お前の強さとやらを相手に見せてみろって。簡単な話だよ」と語っている。木村はプロレスラーとして引退に向かっているから、自分の考え方である『プロレスは強くなければいけない』という事を全人生・全存在を賭けて世間・プロレス界に問いただしていくとも述べている。
確かにハッスルといえば以前はエンターテイメントの集合体だった感じがする。それに対して坂田とジェットの導いた答えはプロレスの原点である『闘い』。様々な団体を渡り歩き、強さの象徴として君臨してきた木村浩一郎にとって、それなら強さを見せてみろという心の現われだったのかも知れない。
金村は「自分はプロレスラーとしてしか生きていけない、アパッチという名前を使っていくのは自分の覚悟の現れでありどんどん他団体に喧嘩を売っていく」と言う。木村の言葉に乗りまずはハッスルに対して喧嘩を売っていく。目的は違うので完全に共闘という訳にはいかないだろうが、とにかく脅威となるであろう二人がハッスルにたいして牙を剥いて襲い掛かってきたのだ。
対する坂田・ジェットも受ける覚悟。ジェットは「坂田さんの出る幕じゃない、俺が一発で終わらせてやります!」と語る。当日の試合後、柴田正人も共闘を直訴する発言を行い、共に外敵と戦う覚悟を決めた。
次回のハッスルMAN'Sワールドは12月2日、新宿FACEでの開催が決定している。果たして生まれ変わったハッスルの行く道はどうなるのか? 木村・金村の今後の動向は? 俄然注目できる存在となってきたと思われる。
Office S.A.D. 征木大智(まさき・だいち)
◆『ハッスルMAN'Sワールド#2』
2010年10月27日 東京・水道橋『後楽園ホール』(観衆650名)
<メインハッスル 本能寺のHEN!〜リベンジ 時間無制限1本勝負>
○坂田“ハッスル”亘(19分36秒 片エビ固め)●若鷹ジェット信介 ※スーパーキック
<セミハッスル ワールドハッスルバウト タッグマッチ時間無制限1本勝負>
○大谷晋二郎&越中詩郎(18分20秒 エビ固め)アフロマン&●スキンヘッドマン ※スパイラルボム
<第3ハッスル @UEXILE世界の強豪シリーズ3 時間無制限1本勝負>
○明太子(ミン・タイ・スー)2nd(8分15秒 STF)●@UEXILE
<第2ハッスル ハッスルMAN'Sカーニバル タッグマッチ時間無制限1本勝負>
○阿蘇山&白波佑介(14分20秒 片エビ固め)●ニセHG&斎藤譲 ※万トーン
<第1ハッスル フレッシュMAN'Sカーニバル〜リベンジ 時間無制限1本勝負>
○佐藤悠己(8分20秒 ウラカン・ラナ)●柴田正人
<オープニング ボーナスハッスル 時間無制限1本勝負>
○セイバー・キャット(6分56秒 タイガー・スープレックス・ホールド)●ジェロニモ
◆『ハッスルMAN'Sワールド#3』
2010年12月2日(木) 開場:18:15/開始:19:00
会場 東京・新宿『新宿FACE』
【チケット情報】VIP(テーブル席)6000円/S席5000円/A席3000円
チケットは11月7日より発売(チケットぴあのみ11月9日から)
e+(イープラス)、ローソンチケット、後楽園ホール、水道橋チャンピオン、闘魂ショップにて発売。
詳細はハッスルオフィシャルサイト http://hustlehustle.com/ まで。