さらに、安倍総理の悲願である憲法改正についても、総理自身が「スケジュールありきではない」、「内容は自民党内で検討してほしい」と憲法改正を投げ出すような発言をしたのだから、メディアが安倍政権の終焉を感じ取るのも無理のないことだった。
しかし、私は、安倍総理が憲法改正をあきらめたわけではないと考えている。それどころか、危機的状況のなかで、憲法改正に向けて最善の手を打ったのだと思う。
改造内閣は、確かに新鮮味には欠けるが、これまでのように閣僚が国会で答弁ができなくなったり、スキャンダルが出てきたり、暴言が問題になったりする可能性は少ない。
国民も政治にスキャンダルを期待しているわけではない。その証拠に、これまでの歴史をみても、内閣改造で支持率が上昇するのは、人気取りの新顔を並べたときではなく、重鎮を揃えたときなのだ。その法則は、今回も見事にあてはまった。共同通信社が内閣改造を受けて実施した世論調査では、内閣支持率は44%と、前月を9ポイントも上回ったのだ。
朝日新聞の世論調査こそ2ポイントの上昇にとどまったが、報道各社が行った世論調査では、ほぼ大幅な支持率上昇が見られた。安倍政権は危機的状況を、内閣改造で乗り切ったとも言えるのだ。
もちろん、それでも憲法改正に必要な国民投票を乗り切れる支持率には回復していない。しかし、安倍総理には秘策がある。それが、再来年10月から予定されている消費税率の“引き上げ凍結”、あるいは“引き下げ”だ。
安倍総理は8月5日の読売テレビの番組で、消費税率10%への引き上げを「予定通り行っていく考えだ」と明言している。だが、その発言には何の意味もない。過去2回の消費税引き上げ延期の際にも、直前まで同じセリフを言っていたからだ。
それでも、凍結や引き下げを財務省が許すはずがない、と思われる人が多いかもしれない。しかし、これから財務省に、ノーパンしゃぶしゃぶ事件以来の大逆風が吹く可能性がある。森友学園問題だ。
国有地を8億円引きで払い下げた問題は、現在、大阪地検特捜部が、立件が可能か調査をしているが、これまで明らかになった証拠によると、近畿財務局が森友学園の支払いをゼロに近づけるように、地中のゴミの撤去費用を水増ししていた可能性が高まっているのだ。
つまり、少なくとも主犯は財務省であることは間違いない。その動機はともかく、もし、財務省内から逮捕者が出るようなことがあれば、同省の信頼は地に落ちる。消費税の引き上げなど言えなくなるだろう。
そうしたなかで、いまから1年後、安倍総理が消費税の凍結あるいは引き下げを大義として、解散総選挙に打って出たらどうなるだろうか。おそらく、選挙で自民党が圧勝し、その勢いで憲法改正の国民投票に臨めば、過半数の支持を得られる可能性は高いと言えるだろう。