菊池 訳がわかんないんだよな。猪木のことだから何かやりたいというのはわかるけど、IGFで何をやりたいのかが見えてこない。試合を見てもいつも後味が悪くて、肩透かしを食った感じなんだよ。
永島 猪木自身が一番困っているんじゃないかな。結局、自分がやろうとしている方向性とスタッフが噛み合わないところがあると思うよ。
吉川 小川直也、高山善廣、ボブ・サップ、ジョシュ・バーネットという4本柱によるエース争いという図式は見えてきましたが、その極上の素材をまだ十分に活かしきれていないですからね。
菊池 団体としてやっているのか、単発のお祭りとしてやっているのか、そこのところも訳がわからない。テーマの見えない大会だと、レスラーだって張り合いがないよ。
吉川 大会が2、3か月に一度だと、話題が継続しないですし。
永島 要はテーマを決めないから話題が飛び飛びになって切れてしまう。ただ、明確なテーマは猪木ではなく、選手たちが打ち出すべき。新日本の全盛期のスタイルは、フロントがアイディアを出し、それを選手が作り上げていっていた。それが猪木の目指していることだと思う。選手はもっと責任感を持つべきで、現時点では選手がそれに応えられていないんじゃないかな。
菊池 参加している選手は、IGFだけでレスラー生活をしているわけじゃないから、「猪木に呼ばれたんだからしょうがない」とやっている部分もあるんじゃないの。
吉川 猪木といえばストロングスタイル。それがIGFの一つの方向性になるかと思いますが、最近はよく「プロレスも格闘技も一緒」と言いますよね。
菊池 昔は東京プロレス旗揚げ戦の猪木VSバレンタイン戦や、新日本旗揚げ戦の猪木VSゴッチなんかはストロングスタイルの原点とされたけど、団体が大きくなってからは実践してないもんな。振り返れば、猪木がやった一連の異種格闘技戦がストロングスタイルだったんだろうな。でもIGFは異種格闘技戦がメインでもないし。
永島 彼が「プロレスも格闘技も一緒だ」と言っているのは、意味合いが違うんだよね。猪木は別として、選手たちがパフォーマンスをする必要はないんだよ。猪木は「リング上は闘いだ」というテーマを強く打ち出したいのに、試合からは闘いのスピリッツというものが出てきていないように思う。
吉川 選手は心のどこかで、猪木の顔色をうかがっているのかもしれないですね。
菊池 猪木にも問題はあるよ。いまの猪木からは、昔のような「マット界をかき回してやる」という燃えるような野心じゃなくて、大会が成功すればいいという小さな野心を感じるんだ。
永島 そんなことはないですよ。彼は選手から「猪木さんもういいですよ、ここは僕たちに任せてください」と言われることを望んでますから。
<プロフィール>
菊池孝(きくち・たかし)史上最長のプロレス評論家
永島勝司(ながしま・かつじ)本紙統括プロデューサー
吉川義治(きっかわ・よしはる)元週刊ゴング編集長