その怪情報に、「なるほど」と合点がいったのが、3月31日から放映されている「Do you know ORIX?」というオリックスグループの新CMだ。その記者会見編では、イチローが会見の場で「オリックスが何の会社か知っていますか?」と集まった記者たちに逆質問。記者たちは社名や球団については知っていても、オリックスの事業展開については「そういえば、オリックスについて実はあまり知らないかも」と騒然とする内容だ。
「この奇抜なイチローCMとチームの快進撃が同時進行すれば、相乗効果でオリックス人気が高まり、ブームが起きるというのが宮内オーナーの狙いでした。その期待がいきなりズッコケたことで、大ナタを振るうとの情報が流れたのです」(スポーツ紙デスク)
イチローの新CMが開幕戦と時を同じくして流れたオリックスだったが、地元京セラドーム大阪で、いきなり楽天相手に3連敗する最悪のスタートを喫した。福良監督は「また場所を変えて(4日からの西武戦)切り替えていくしかない」と取材陣に話したが、宮内オーナーは「惜しい負け方なんかない。結果がすべてだ」と激怒したという。
「このパターンはお決まりのコースです。オリックスは2000年以降、石毛宏典、岡田彰布、森脇浩司といった監督らがシーズン途中で交代させられています。石毛監督に至っては開幕からわずか20試合での解任。福良監督にしても一昨年6月2日に、森脇前監督の成績不振による電撃休養に入ったことから監督代行に就いた身。ただ、監督1年目の昨季を最下位で終えたことで、宮内オーナーが続投を決めたとはいえ、執行猶予付きのようなもの。各社とも“Xデー”に備えて情報収集に躍起です」(オリックス担当記者)
オーナーの苛立ちは、春季キャンプの視察でも見て取れた。
福良監督から「順調です」とキャンプ報告を受けた同オーナーは、途端にぶち切れる。監督、コーチ、選手を集め、「昨年日本一の日本ハムが順調ならもう1回優勝できるが、最下位のうちが順調ではまた最下位になる。順調ではいかん。クレイジーなキャンプをやらないと」と、声を荒げたのだ。
そんな伏線があっただけに、開幕ダッシュに失敗した福良監督の休養は、もはや決まったも同然という流れだった。ところがどっこい、オリックスはそこから急上昇。マリナーズから獲得した新外国人ロメロの4試合連続ホームランなどで、あれよあれよと5連勝。2位に急浮上したのだ(4月10日時点)。
「快進撃の一番の原因は、福良監督が休養した場合の受け皿として、前中日GM落合博満氏の名前が取り沙汰されたから。ユニホームか背広かは分かりませんが、監督イチローを迎えるための環境整備のためなのは明らか。実業家の宮内オーナーは、落合氏が中日時代に年間8億円もの選手年俸を削減した手腕を高く評価しています。『オレ流来襲』の情報に、選手たちはこりゃたまらんとばかり、こぞって奮起し、チームが変貌したのです」(同)
球界の顔であるイチローと落合氏、そしてオリックスと中日とは、実は縁浅からぬ関係にある。
昨夏、中日の谷繁元信監督が休養した際、森繁和ヘッドコーチが監督代行に就いたが、落合GMが今季の監督に招請しようと動いたのがイチローだったという。愛知県出身のイチローは、ファンの人気も絶大。谷繁方式で兼任監督に擁立し、生き残りを図ったのだ。
結果は落合氏が解任され、腹心の森氏が監督に抜擢された。イチローが中日入りしていれば、落合氏も安泰だったが、イチローは古巣オリックスを選んだ。
「そこでイチローは自分が戻るまでの期間、(宮内オーナーに)落合氏の起用を進言したのでしょう。落合氏は最下位に沈んでいる中日の原因が“落合氏の負の遺産”などと報じられ、カチンときている。オリックスでワンクッション置き、2020年の東京五輪日本代表監督にサプライズ立候補という情報もある」(中日OBの野球解説者)
イチローの日本球界復帰が近いことを示すように、イチローを慕い2012年に渡米した川崎宗則が電撃的に日本に戻り、4月1日にソフトバンクと契約した。イチローも3月に、ロサンゼルスに所有していたコンドミニアムを2億7200万円で売却するなど、米国の資産整理を始めている。
イチローが所属するマーリンズも、元ヤンキースのデレク・ジーター氏を含む投資家グループが買収交渉に入っており、これを一つの転機と捉える向きもある。
再びオリックスが低迷したとき、イチロー政権へ向け、落合氏の「オレ流オリックス」がフル加速する。