9月14日から両国国技館で秋場所が始まる。日本人としては3年ぶりとなる新大関・豪栄道が気になるところだが、それ以上に関係者の注目を集めているのが、初土俵からたった4場所という史上2位タイのスピードで幕内に駆け上がってきた逸ノ城(21)だ。
モンゴル出身と聞いて、「なんだ、またか」と思うファンも多いだろうが、同じモンゴル出身でも白鵬や日馬富士、鶴竜らと違うのは、彼らが首都ウランバートル出身の都会っ子なのに対して、この逸ノ城はアルハンガイ県というローカルのゲルと呼ばれるテントで生まれ、馬を友だちに育った遊牧民出身という点。
身長は192センチと白鵬と同じで、体重は幕内で2番目の199センチという見るからにバランスのとれた巨体もさることながら、その全身に漂わす土くさい雰囲気が無限の可能性を感じさせるのだ。
「元大関の琴光喜や、照ノ富士、貴ノ岩らと同じ鳥取城北高に相撲留学。在学中、五つもタイトルを取りながら卒業後は入門先が見つからず、母校でコーチをしながらジッと入門のチャンスを待っていた苦労人です。それだけに目を見張るようなスピード出世にもかかわらず、浮ついたところがない。稽古態度も真面目そのもので、関係者の間では、次の横綱候補の一番手に推す声も高い」(担当記者)
期待の日本人力士、遠藤にとっては、またしても強力なライバル出現。白鵬がかわいがっているのも、逸ノ城にとっては心強い。5日に行われた横審の稽古総見でも、初参加で緊張する逸ノ城にもっとリラックスするようにアドバイスしたり、最後のぶつかり稽古で胸を出したりしていた。もしかすると、自分の後継者はコイツだ、と密かに目しているのかもしれない。
こんな逸ノ城の唯一の悩みが着実に増え続ける体重。本人は「ダイエットしてもなかなか減らない」と頭を抱えているそうだ。
師匠の湊親方(元幕内湊富士)は、「ケガさえなければ2ケタは勝てる」と期待するが、果たして−−。
規格外のニューフェースが間もなくベールを脱ぐ。