「そうはいっても、松坂にもプライドがある。いまさら復帰のメドが立たないからと言って、コーチが命令口調で『ああしろ、こうしろ』と指示しても逆効果です。復帰までの十分な時間を与えてやるしかない」(球界関係者)
ホークスは優勝を目指すチームである。松坂というビッグネームを使い、人気目当ての集客をするために、一軍で調整登板させることもできた。しかし、工藤公康監督(52)が松坂を二軍調整させてきたのは、右肩の故障のせいだけではなく、勝てる要素が少ない投手を投げさせられないからだ。
「今年のパ・リーグは120試合を過ぎても、優勝チームが決まらないのではないか。上位チームがピンポイントの補強を狙って、駆け込みトレードを仕掛ける球団も出てくるでしょう。ホークスは選手層の厚いチームですが、復帰のメドが立たない投手をいつまでも待っているほど余裕があるわけではない」(スポーツ紙記者)
松坂に対しては、復帰までの十分な時間を与えてやるのが妥当なようだが、そうなると、ホークスは大事な70人の支配下登録枠を1人分無駄にしていることになる。そこで浮上してきたのが、第2の斎藤和巳といえるような策だ。
斎藤は2007年シーズン中に右肩腱板損傷で戦線を離脱した。その後、長いリハビリ生活に入ったが、業を煮やした球団は11年に支配下登録を外し、リハビリ担当コーチとして、現役復帰を目指すよう通達した。その措置に斎藤は憤ったが、受け入れざるを得ず、復帰を目指したが13年途中に引退を表明した。つまり、松坂も近々の復活が難しいようであれば、いったん支配下登録から外し、育成選手契約にする計画があるというのだ。
「松坂も今の状況に焦りを感じているのは間違いありません。一度、支配下登録から外してやった方が、追々は本人のためかもしれない」(前出関係者)
ホークスは三軍制を敷いている。支配下登録を外れれば、自動的に三軍扱いとなり、二軍戦に出場するチャンスはさらに少なくなる。ホークスの三軍選手は主にプロアマ交流戦に出場しており、松坂が社会人、大学生相手に投げることになるかもしれない。
「右肩が本調子ではないからかもしれないが、二軍戦で登板した際に球速は月並みでした。右肩の開きも早いため、もし一軍戦で投げていたならば、釣瓶打ちにされた可能性もある」(同)
しかも、松坂はリハビリだけでは体力を持て余してしまうからか、体重過多にも陥っている。支配下登録を外れるのは屈辱以外の何者でもないが、じっくりと時間をかけてリハビリに取り組んだ方が良策かもしれない。もっとも、アマチュアに痛打されたときには、立ち直れなくなるかもしれないが…。