被ばく量が100ミリシーベルトを超えると、がんのリスクが高まるとされる。
「一般人が年間に浴びてよい人工放射線量は、自然放射線と医療放射線を除き年間1ミリシーベルトと定められている。レントゲン技師などの放射線業務従事者では年間50ミリシーベルト、5年であっても100ミリシーベルトです。作業員らは通常の100倍もの放射線を浴びたことになるわけです」(サイエンス記者)
東電は、これまでに522人の作業員の実測データを世界保健機関(WHO)に報告しており、WHOが2月に公表した報告書では、このうち甲状腺被ばく線量が100ミリシーベルトを超えた作業員は178人だった。
しかし、そもそも実測データがある522人以外の今回の調査自体、取り込んだ放射性セシウムからヨウ素の値を推計し、甲状腺被ばく線量を評価したもので、あくまで推定に過ぎず、実際の人数はもっと多いかもしれない。
心配なのは、一般市民への健康被害の広がりである。実は既に、福島県内の子供において12人が甲状腺がんを発症し、15人に疑いがあるとされているのだ。
「体内に取り込まれた放射性ヨウ素は甲状腺にたまりやすく、特に子どもは影響を受けやすい。甲状腺がんは100万人に一人発症する稀有な疾患で、年間発症する160倍もの頻度で広まっている。しかも、原発からどんな物質がどれくらい出たのか、はっきりしない。まず、甲状腺がんとの関連をはっきりさせる調査が重要です」(世田谷井上病院・井上毅一理事長)
一方、首都圏でも不気味な兆候が見られている。
「1000人の子供の甲状腺を調べている医師の診断では、甲状腺の良性腫瘍である嚢胞・腺腫様甲状腺腫が約30%も見つかっており、白血球の異常も60%に及んだ」(医療関係者)
慎重な調査が必要だ。