「小山台のエース兼主将・伊藤優輔君は、プロのスカウトも視察した好投手です。昨年、国公立大83名、早慶上智55名の合格者を出した進学校で、同校では部活動のことを『班活動』と呼び、練習時間は平均して1時間ほど。野球班も例外ではありません」(スポーツライター・美山和也氏)
昨秋の都大会では早実など甲子園経験もある強豪私立を破り、8強入り。エースの快投も大きいが、勝因はインテリ頭脳と、高校野球に対する取り組み方にあったと言っていい。
同校は午後5時には完全下校する。校庭も60×90メートルと狭い。しかも、他のスポーツ班との掛け持ちだ。この狭いグラウンドと、短い練習時間をいかに効率よく使うかがテーマであり、キャッチボールはアップ運動を兼ねて走りながら行っている。その後、投手はブルペンに行き、野手陣は守備練習に入るのだが、ノック待ちの時間を省くため、一部はティー打撃に入る。ノックとティー打撃を交代で行い、平日の練習は終了。定番の雄叫びもない。
同校と練習試合を組んだ某校の監督が証言する。
「彼らは毎日、ノートを付けています。その日の練習で気付いたことや反省点などが細かい字でビッシリと書かれていました。小山台の福嶋正信監督から『打撃理論を話してやってくれ』と頼まれましたが、全員、こちらの目を見て集中して聞いてくれました」
まさに“リアル『もしドラ』”。昨年、元プロ野球選手による現場指導の規制が緩和されたが、猛特訓などせず、野球を学問として学ぼうとする現代っ子の気質に応えるべきかも。