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日本人の15人に1人がかかる“心の風邪”「うつ病」患者が10年で倍増した理由(2)

 うつ病患者急増のもう一つの背景は、新抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の出現である。'99年にわが国で発売されたこの薬は、前の世代の抗うつ薬(いわゆる三環系・四環系抗うつ薬と呼ばれるもの)に比べて副作用が少なく、画期的な薬としてもてはやされた。
 つまり、うつ病の診断基準が緩やかになって、うつ病と診断される人が増加傾向になったところへ、タイミングよく画期的な新薬が認可されて登場したというわけだ。

 では、うつ病の治療とは、どのようなものなのか。
 「うつ病は非常に個人差がある病気です。気分の落ち込みといっても、例えば、災難に遭遇して絶望したり、落ち込んだりするのはむしろ当然のことで、精神的負担があって落ち込んでいるのか、そうでなくて落ち込んでいるのか、といった患者の状況を十分に把握した上で、医師は治療に入ります。治療の基本は、休養と適切な薬物治療と心理療法。うつ病と診断し、抗うつ薬を処方する場合は、一般的にSSRIがファースト・チョイスになります」(富澤院長)

 SSRIは、脳の神経細胞間で情報伝達を担う化学物質セロトニンに注目したもの。情報伝達の際に放出されるセロトニンは、役目を終えると吸収されてしまう。その吸収を防いでセロトニンの濃度を保つことにより、うつ症状を改善するしくみだ。症状が改善する割合(有効率)は、70%前後と高い。
 ところが、最近になって、このSSRIよりも有効率が高く、効果の出現が早いと評判の抗うつ薬が登場した。'09年9月に認可されたNaSSA(ナッサ。ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬)だ。'90年代にオランダで発売されて以降、現在までに世界の90カ国以上で発売されている。
 この新しい薬は、SSRIのしくみとは異なり、セロトニンやノルアドレナリンを認識するセンサーを塞いで、それらが出ていないと錯覚させ、セロトニンやノルアドレナリンの分泌を促すもの。薬の働き方が違うことから、NaSSAは、SSRIが効かず、なかなか治りにくい、いわゆる難治性うつ病の治療に期待されている。

 新しい抗うつ薬が世に出ることは、患者にとって「あの薬がダメでもこの薬がある」という選択肢が広がるという意味では良いことかもしれない。ただ、こうした新薬にも、比較的少ないとはいえ、副作用があることも忘れてはならない。
 主な副作用を列記してみよう。
○三環系→眠気、口渇、便秘など
○SSRI→頭痛、吐き気、下痢など
○NaSSA→眠気、体重増加など
 前の世代の抗うつ薬(三環系・四環系抗うつ薬)やSSRIの副作用の発現率は、どちらも10%前後とあまり変わらないのだが、副作用を比較すると、SSRIのほうがそれ以前の抗うつ薬よりも副作用が少ないといわれている。

 うつ病の予後調査(治療した後の経過)によると、うつ病になる人の半分は1回きりのうつで終わるが、あとの半分は2回目のうつがやってくる。そして、2回目のうつがあった人の70〜80%は、3回目のうつがあるとされている。
 これは、精神科医の常識であるといわれる。そうであるなら、決して「うつは心の風邪」などではないことを心すべきだろう。

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