「今季、4番に座る栗原(健太)をサードにコンバートする予定です。このキャンプでは徹底的に鍛えられるでしょうね」(チーム関係者)
お披露目となった昨年の秋季キャンプでも、野村イズムを垣間見ることが出来た。某中堅選手が「持病箇所が痛むから、大事を取って今日は別メニューに…」と申し出たときのことだ。野村監督は「だったら、帰れ!」と、厳しく言い放った。
これまではブラウン前監督の方針で、「無理をして、戦線離脱に繋がるのがいちばんいけないこと」とし、体調面に関する自己申告制が取られていた。しかし、野村監督は前政権のそうしたやり方を一掃。自身が若手時代に鍛えられた『猛練習』を復活させるつもりでいる。
「昨年の今頃、野村監督は母校・駒澤大学野球部のキャンプを指導しています。それも、広島キャンプとは20キロと離れていない場所で。NPB関係者は『広島監督のリハーサル』と見ていました」(ライバル球団職員)
熱血指導、妥協を許さない猛練習…。そう聞かされると、自前で選手を育て上げた黄金期の再来も期待できそうだが、広島フロントは、一抹の不安を抱えている。新外国人選手のジャスティン・ヒューバー内野手(31)が「本当に日本球界向きなのかどうか」まで見定めなければならなくなったのだ。
前出のチーム関係者によれば、ヒューバーは「野村監督のお願い」で獲得が決まったという。
「球団の渉外担当はあまり買っていませんでした。いったんは獲得を見送った選手なんですが、野村監督は『どうしても!』と言ってきたんです」(同)
球団もすでに発表しているが、ヒューバーは07年11月、豪州代表選手としての来日経験もあり、第2回WBCでは「4番左翼」で豪州チームに貢献している。「野球に取り組む姿勢もマジメ」とのことだが、メジャー経験の少ないマイナー選手である(ツインズ傘下3A)。期待外れだったら、当然、その責任は野村監督が負うことになる。
「内野手といっても、一塁と外野しか守れません。栗原を三塁にコンバートするのはこのヒューバーを使うためで、もし栗原が慣れないサードの守備で故障するようなことにでもなったら…」(同)
野村監督がこのヒューバーを推したのは、ロイヤルズにコーチ留学したころ、そのマジメな練習態度を見ていたからだろう。27歳とまだ若いが、昨季のメジャー出場試合数は、僅か1試合のみ。メジャー雑誌や専門TVの特集では「期待の若手」として何回か紹介されたこともあるそうだが、マイナー生活は9年にも及んでいる。伸び悩み、ダメ出しをされた中堅選手という見方もできなくはない。近年、広島が獲得したラロッカ、ロペスといった外国人選手も、来日当初の評価は決して高くなかった。
野村監督の『お願い』で獲得したこのヒューバーが、新生カープのカギを握っている。