<中国人が見た日本の異常性とは?>
「中国にいた頃、中国メディアは日本社会が右傾化しているとしきりに報道していました。でも、実際に日本に来てみたら全然そんなことはない。欧米のメディアは中国共産党の悪事を盛んに報道しているけれど、日本のテレビ局などは中国に配慮して報道規制を敷いているのでしょうか、例えば人権弁護士狩りだったり、共産党による事件の隠ぺいなどをあまり報道しません。それに、日の丸や君が代に対してアレルギーを持っている人が一部にいるということも衝撃的でした。国旗や国歌という日本の根底を為すものを否定してしまったら、その人はナニジンなのかと思ってしまいます。僕は日本人の自虐思想が根深いと感じたんです」
これまでも中国問題の識者として名の知られていた孫氏だったが、彼が一躍ネット上で有名になったのは、昨年の7月17日、安全保障関連法案に対する反対派のデモで渦巻く国会議事堂前に行って、その模様をツイッター上でルポしたことだった。
「その日、僕は、同じく反中国共産党の漫画家・変態唐辛子(本名:王立銘)さんと一緒に、中国共産党による人権弁護士狩りに抗議するため、国会にデモに行ったんです。そしたら、たくさんの安保改正法案反対派の人たちがいました。話題のSEALDsもラップ混じりに安倍政権を批判していましたが、僕はそれに対してすごく違和感を覚えたんです。なんで、海外の脅威に対してアメリカとの同盟関係を強化することが戦争法案になるのかと。彼らは話し合えば中国とも分かり合えると主張しましたが、中国人である僕からすると、その考えはすごく甘いです。これまで中国共産党はチベットを強制的に支配したり、今は東シナ海に対する圧力を強めたりしています。日本が弱腰な態度を見せていたら、すぐに尖閣諸島に対しても侵攻しにきますよ。僕としては、日本はもっとアメリカを始めとする世界の軍隊と協調関係を深め、その力を背景として、中国共産党の横暴に対してNOと言ってほしいんです」
孫氏は、連日、ツイッター上でSEALDsをはじめとする安保改正法案反対派に異を唱え続けた。それに対する賛同もあったが、反対意見も多々あり、「ネトウヨ」や「軍国主義」などといったバッシングも浴びたという。
<国会中継を見ながら野党に対して違和感>
最近、孫氏は国会中継を頻繁に見ているというが、それに対しても違和感を覚えているという。
「日本の民主党をはじめとする野党は、日本をよくしようという意識が全く見えなくて、ただ自民党の足を引っ張りたいだけのようにも思えます。安保法案のときも、ただ反対と唱えるだけで、中国の脅威に対してどう立ち向かうのかという問題に対しては何の代替案も出しませんでした。先日、北朝鮮の核実験が主題にされた際、民主党の岡田克也党首が、安倍首相に日本の安全保障はどうするのかって質問を投げかけて、民主党の議員たちは一斉に拍手しました。でも、安保改正法案に最後まで反対していたのは民主党だというのに、なんだか変な話です」
そんな孫氏も、中国に在住していた2009年、民主党が政権を取った際には、これで日中関係が良くなると希望を持っていたのだという。
「鳩山さんは東アジア共同体を提唱するなど、中国との協調関係を進めました。当初、僕も民主党を大歓迎しましたが、結局、日中が本当の友人関係になることはなかったんです。民主党政権は、中国共産党によるウイグルやチベットの侵略問題も声をあげず、中国共産党の横暴を全て見過ごしました。お隣の日本が何も言わないから、中国はどんどん図に乗ったんですよ。中国共産党は、中国国内に対する言論の締め付けを厳しくしたり、アジアの中で我が物顔にのさばるようになったんです。そして最終的には、民主党政権の時代に、尖閣諸島問題が起こって中国で大規模デモが起こり、両国の関係は自民党政権のとき以上に悪化しました。こうした両国の関係の悪化、並びに中国政府の横暴は、民主党が弱腰だったことが、招いた結果だと思います。安保法案の改正が必要となったのも、民主党政権のツケだと思うんです」
孫氏は歯に衣着せぬ物言いで、日本の政治に意見をする。これまで自身も中国共産党の横暴を中国で体験してきたからこそ、孫氏は、中国に対しては強気で接することが必要だと主張し、日本の「和」を尊ぶ精神は、中国には通用しないと断言する。
中国で暮らしてきた孫氏の視点は、また日本人とは全く違ったもので、ハッと気づかされることが多い。野党の政治家、並びに安保法案改正反対派の人たちは、『中国人が見た ここが変だよ日本人』を読んで、どういう感想を抱くか聞いてみたいところだ。
(文・雨宮樹)
■孫向文著『中国人が見た ここが変だよ日本人』(青林堂)1296円