「今回の監督交代では、落合氏が意表を突く形でGMに就任し、下馬評にも上がらなかった谷繁捕手が兼任の形で監督に抜擢された。これはあくまで形式的なもので、事実上の“監督”は紛れもなく落合GM。いや“闇将軍”と言った方がいい。彼が思い描いているのは、海部俊樹総裁を担いで自民党幹事長に就き、政権与党の自民党を支配した小沢一郎氏です。そのとき発したのが『担ぐ神輿は軽くてパーがいい』というあの名セリフ。この構図こそが今のドラゴンズで、もはや落合GMのやりたい放題。海部さんが名古屋出身ということもあり、谷繁監督を憂える声は少なくありません」(中日新聞関係者)
白井文吾オーナーが落合氏をGM起用した狙いもそこにある。今の中日新聞社にとって急務なのは、ペナント奪回にも増して人気の回復、球団財政の再建。ドラゴンズが12季ぶりにBクラスに沈んだこともあり、今季は18年ぶりに主催試合の観客動員数が200万人の大台を割り込んだ。球団トップが大幅なコストカットを断行するのは、当然といえるのだ。
日本プロ野球選手会が発表した12球団の年俸調査によると、中日は最近10年で7度も上位3傑に入っている。今年の平均年俸5198万円は巨人(6155万円)に次ぐ2位で、横浜DeNA(2467万円)の2倍以上。2007年の総額31億7690万円に至っては、12年連続トップだった巨人(31億2596万円)を抜き1位だった。
なぜ中日の選手年俸が跳ね上がったのか。答えは簡単。落合氏の監督時代の8年間で優勝4回、日本一1回。全てAクラスの成績を収め、右肩上がりで年俸が上がり続けたからである。
「2年前に中日が落合監督を解任した一番の理由はこの問題でした。年々、総年俸が上がり続け、落合監督自身にしても最後は3億5000万円プラス出来高で計5億円の年俸でしたから。先週、巨人の原辰徳監督が新たに2年契約を結びましたが、年俸は3億円です。これと比べてもいかに高給取りだったかがわかる。白井オーナーが落合氏と深い信頼関係にあったにもかかわらず、泣いてバショクを斬った理由はここにあったのです」(球団関係者)
このときの舞台裏について、中日OBの野球解説者が「落合監督の解任は、2年後の復帰を見据えた出来レースだった」と本誌に明かした。
「落合政権後の2シーズンを捨てゲームにしたのです。狙いは二つ。まず、落合政権でコーチ職を失い、不満が充満していたドラゴンズOBたちのガス抜きです。OB会長の高木守道氏を監督に迎え、有力OBをその配下に就けた。当然、前政権よりポテンシャルが劣るから優勝など望めない。2年も続けば、年俸の大幅カットの理由ができる。そこでいったん選手年俸を元の状態に戻し、落合監督に再登板願うというシナリオだったのです。全ては工程表通りに進んだのですが、肝心の有能なコストカッターがいない。そこで落合氏が“監督復帰”する前にGMに就き、厳冬更改の最前線に立っているのです」