同作の1作目といえば、宮沢りえのデビュー作ということや、本物と見間違いそうなレプリカの戦車が登場することで話題となったので知っている人も多い。しかし、この2作品目となると、知名度はそれほど高くない。原作は宗田理の『ぼくらの秘島探検隊』となっており、これは初代の原作となった『ぼくらの七日間戦争』から数えてシリーズ10作目の作品にあたる。
基本ストーリーは1作目とほぼ同じで、教師の横暴に不満を持った生徒たちが、反発して家出。そして立てこもり、教師たちに反撃を加えるというものだ。特徴としては『3年B組金八先生』(第2期)のように、立てこもった後に、警察に拘束され護送車で運ばれる中、中島みゆき『世情』が流れるという物悲しいものではなく、楽しい家出の延長として、ついでに気に入らない大人をこらしめるという、とにかく痛快さを重視していることがあげられる。その部分は一応守っているのに、イマイチな部分が目立ってしまうのは、前作のイメージを強く引きずるからだろう。
同作の、最も作品としてのパンチとして弱くなっている部分は、なんと言っても宮沢が出演していないという部分だ。1作目では、反抗する中学生のなかで際立って大人びている宮沢の存在感というのが、作品の価値を高めている部分がかなり大きかった。まあ、この点は仕方ないかもしれないが、今回の作品では中山ひとみ(渋谷琴乃)と具志堅マリコ(具志堅ティナ)のダブルヒロインという形となっているため、さらに個々のキャラクター性が薄くなってしまっている。
パート2の映画として、初代との差別化をはかり、鑑賞者側に印象を強く残す方法として「物量を増やす」という方法がある。わかりやすいところで言うと『ランボー/怒りの脱出』や『エイリアン2』のような作品だ。これらの作品では、とにかく敵キャラが増えて、バトルシーンが多くなったので、初代と比べると「コレジャナイ感」は否めないが、娯楽性の高さはかなり上がっているので、これはこれであり、という許容も生まれる。ランボーに限って言えば、初代の平和な社会に馴染めず、怒るベトナム帰還兵というよりは、怒りの脱出以降の、機関銃をぶん回し、敵兵相手に無双する姿の方が、一般的イメージになっているほどだ。しかし『ぼくらの七日間戦争2』はというと、戦いの舞台をどこかの倉庫から、沖縄の離島に移し、教師に加えて島の開発業者が敵に増えたとはいえ、警察の出動はなし。戦車もない状態なので、物量面でいうと、下手をするとグレードダウンした印象すら受ける。
パート2にはひとつ利点がある。基本的なストーリーラインを「皆様ご存知のように」と省略して、別の世界観を広げることができる点だ。『ゴッドファーザー PART II』や『スターウォーズ 帝国の逆襲』などがこれで、複数の人物をメインとした2、3本のストーリーラインを組ませることで、うまくいけば、今までファンがもっと見たいと思っていた部分を強調することができる。だが、この部分も同作は、活かしておらず、むしろロケ地を沖縄としたおかげで、保護者の視点というものが消失し、子供の言い分だけが目立つこととなっている。一応教師の視点というものがあり、子供そっちのけで遊びほうけているシーンはあるが、反面、子供に直接ゲスさを発揮する場面は少なくなっており、その後の反撃の痛快さというと、1作目の方が印象に残る。どうせなら前作クライマックスの「うーん(次に)狙うは…、国会議事堂だ!」の言葉通りに、国会議事堂を舞台にした方が良かったのではないだろうか?
はっきり言って作品の“目玉”となる部分がことごとくなくなってしまっているのがこの作品だ。公開当時の世相的には、校内暴力や体罰などが問題化し、解決や是正に動いていた時代なので、そこまでの生徒の閉塞感を出さない方がいいと判断したのだろうか。発端は学校の問題だとしても、今回は島を守りたいという環境問題の方が途中で主流になってしまうため、子供が感じている不満も前作ほど印象が強くない。
ちなみに、これはあくまでパート2として前作と比較した場合は微妙な部分が多いという話だ。前作のイメージを引きずらないで、単発の映画として観た場合は、コメディー色が強くなっており、一応娯楽映画としては良い部分も多い。大人たちを必要以上にアホにすることにより、簡単に罠にかかる大人で、笑いを提供するという方法は、この作品より少し前に公開した『ホーム・アローン』でも成功しており、子供向けの映画の狙いとしては決して悪くはないだろう。後は前作にも登場していた八代謙一役の佐野史郎に、もっと目立ってもらって子供に報復を受ければ、さらに面白くなっていたかもしれない。子供を捕まえるための参謀役になってもらうとかで…。
(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)