その人物とは元幕内(最高位=前頭9枚目)の若麒麟こと鈴川真一(27)。彼は相撲協会から解雇された後、退職金に当たる力士養老金の受け取りを辞退。同年4月には、横浜地裁から、懲役10カ月、執行猶予3年の判決を受け、表舞台から姿を消した。
その後、一般の仕事をしていたという鈴川は、今年2月にアントニオ猪木に弟子入り志願。これが認められ、猪木が会長を務めるプロレス団体・IGFに入門した。
猪木は元々、相撲取り嫌いといわれていた。ただ、鈴川に関しては、まだ20代と年齢も若く、化ける可能性があると判断しての入門許可であったのだ。
その鈴川はマジメに修行を積んで、9・25東京・JCBホール大会でデビュー。アマレスの元バルセロナ五輪米国代表で総合格闘技界の実力者、マーク・コールマンと対戦し、TKO勝ちを収める大金星を挙げた。
そして、2戦目が12・3両国国技館大会に決まった。対戦相手は身長2mを超える“ブラジルの大巨人”モンターニャ・シウバ。ここで、なんと鈴川は“結びの一番”となるメーンイベントに起用されることになったのだ。プロレス界では異例の大抜擢に鈴川は、「両国に戻るということで、ケジメをつけたい。メーンイベンターは相撲でいえば、横綱。それにふさわしい試合をしたい」と意欲を見せた。
鈴川が日本相撲協会を解雇されてから、わずか1年10カ月。相撲界に泥を塗った男が、早々に聖地・両国のメーンを務めるとあって、協会側も態度を硬化させているという。
だが、「協会にとって、国技館の会場使用料は重要な収入源。この不景気で国技館を借りる団体が減りましたので、借りてくれるIGFは“お客様”。協会側としては文句も付けづらいのです。とはいっても、猪木の非常識な抜擢には、問題もあります。まだ、執行猶予も終わっていませんから」(某ベテラン記者)。
プロレス界に世の常識は通用しないというが、日本相撲協会を逆なでするような猪木の判断には、さすがに業界からも批判が噴出しているようだ。