興義館の切腹場は切腹をするためのものではない。サムライとして心を引き締めるための覚悟の場である。ストロングスタイルとはセメントを基本にした、固いレスリングと思われているが、そうではない。
当時、私が育った新日本プロレスは、レスラーとしての誇りから育てられ、練習ではセメント重視、私生活では服装も厳しく、敬語の本まで読まされた。内面から育てられたのだ。プロレスに対しての信念や義や態度をも含めた生き方である。
力道山先生から猪木会長(私の場合)へ引き継がれた魂の世界だ。タイガーマスク全盛時でさえ、本道から外れてはならないと、猪木会長や山本小鉄さんらの目が怖かった。「佐山さんは空中戦の先駆者ですね」とよく言われるが、まったくあり得ない。
飛んだり跳ねたり大技の連発は誰でも出来る。魂の中から戦いとして仕留める結果でなくてはならないのだ。受けを狙い、単に見せるために飛んだり、大技を連発させるのは学芸会に過ぎない。魂で育ち、ナチュラルで試合が構成され、その迫力を観客に伝えるもの、これがストロングスタイルだ。
現在、私の本業は武道を創作することである。歴史に恥じないものを創るため、国家の威信をかけ心血をそそぎ、今までの常識を超えた精神観と科学からなるものだ。ある大きなプロジェクトと共に進んでいる新武道だが、OBとして、このままプロレスが道化師の側へどんどん地位を落としていくのは納得いかない。
だから私はプロレスを助ける。そしてプロレスが戻った頃、私はそこにいないだろう。今は義のために全力を尽くす。