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カジノ法案またまたまたまた先送り “とばっちり”パチンコ業界の悲哀

 今度こそは、と期待された日本版『カジノ』が、またまた頓挫した。政府筋の話によると「内閣官房に密かに設置されていた“統合型リゾートに関する特命チーム”の業務を当面、凍結する方針」だという。

 同チームは『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(通称:カジノ法案)』成立後の整備を円滑に行うために活動していた政府肝いりの組織だった。これまでの議論の整理や諸外国のカジノ開業事例の収集分析、管轄(利権)の線引きなど、すべてこの組織が水面下で準備をしてきたと言っていい。さらに、国会でのカジノに関する答弁を作り上げていたのもこの組織にかかわる面々であった。関係者が苦笑交じりに語る。
 「こんな組織は政府として法案が通ると確実に思っていないと作れないものです。それが活動停止ということになれば、今回も法案を諦めたことと同義でしょう」

 当初、賛成派は「観光産業成長の起爆剤」としてカジノ法案を成立させようとしていた。それが、なぜが知らぬ間に「五輪との相乗効果を狙うためのコンテンツ」に変わってしまった。「五輪は東京だからカジノは大阪で」「東京とも離れていない横浜で」などカジノが五輪ありきになってしまい、間に合わないことがほぼ決定的となったので「1回休め」というわけである。
 「大型施設だけでなく交通インフラの整備も必要だったカジノを含む複合観光施設は、そもそも2020年に間に合わせるには'14年中の法案成立が必須といわれていました。'14年の通常国会で成立せず先送りになった後、水面下の準備だけは進めていた政府も、ここに来てさすがに諦めざるを得なくなったのです」(前出・関係者)

 さて、カジノ法案の右往左往で“とばっちり”を受けたのがパチンコ業界である。「当面、カジノが開業されないことで、客を取られず安心!」という話ではない。問題は、実質的に換金はできるものの“直ちに違法ではない”(警察庁見解)パチンコホールという存在がクローズアップされたことに他ならない。換金問題だけでなく、クギ問題、ギャンブル依存症問題…、ことごとく“寝た子”を起こされてしまったのだ。都内ホールの某オーナーは「私たちはグレーゾーンにいるからこそもうけられる商売。日の当たる場所は厳しい」と本音を漏らす。
 警察庁保安課が公表した'15年末におけるパチンコホールの営業所数(許可数)は1万1310軒。1996年以降20年連続で前年割れとなっており、この20年間でホール数は3分の2に激減した。パチンコ市場も一時期は「30兆円業界」と数ある産業の中でも有数の規模を誇ったが、ホール数の減少に比例し衰退。昭和の終わり頃に言われていた「参加人口3000万人」は見る影もなく、すでに1000万人を割り込んでいるとの見方が大半だ。

 娯楽の多様化、可処分所得の減少、ギャンブル依存に対するイメージの悪化…。さまざまな理由を背景に急速に市場を縮小させている中で起こった今回の“カジノとばっちり問題”が業界に与えたダメージは深刻で、その最たるものが「クギ問題」。これは、長きにわたって見て見ぬふりをしてきた警察庁が「パチンコホールが行っているパチンコ台のクギ曲げ(出玉調整)は違法である」との旨を昨年、業界団体に文書で通知したことに端を発する。背景には、それこそカジノ解禁を見据え、類似業界とみなされる可能性が高いパチンコ業界を、できるだけクリーンにしていきたいという行政側の思惑もあった。
 「'15年末時点でホールに設置済みのパチンコ台は約290万台。もっとも、この290万台を一斉に稼働停止、強制入れ替えさせるほど警察庁も無理強いはしていません。基本的には業界の自主回収に期待するというスタンスです」(前出・ホールオーナー)

 とはいえ、ギャンブル性が低くなればヘビーユーザーは離れ、やがてはライトユーザーさえも減っていくことになる。もちろん、業界としては建て直しに躍起で、ある団体幹部は「役割は業界を守ることだけではなく、社会的な信用を得ていくこと」と目標を語るが、これは10年以上前から言われていること。カジノ構想によって明るみに出されたパチンコのグレーな部分をリカバリーするのは、容易なことではない。
 今年5月に開催される伊勢志摩サミットでは、警察業務の負担軽減に協力すべく、5月中のパチンコ台新台入れ替えは自粛するという。ただし、これはパチンコに嫌悪感を持つ人たちは気付かない措置であり、この程度ではイメージアップは望めない。新しいことを何一つできないことが、凋落の一途をたどっている一番の原因とみる人は多い。

 “娯楽の王様”パチンコの店舗数が、いよいよ1万軒を切る日も近い。

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