「元広島の栗原、元オリックスの坂口といった選手は、トライアウトを受けずに新天地への移籍が決まりました。“待つ”だけで決まるのは実績のあるベテランだけ」(スポーツライター・美山和也氏)
しかし、実績があっても決まりそうにないベテランも出てきた。松中信彦(41)と井川慶(36)だ。
「松中に関してはソフトバンクが引退セレモニーの用意もしていました。それを断り、現役にこだわっての退団(自由契約)です」(ベテラン記者)
その退路を断っての再スタートを影ながら応援しているとされるのが、王貞治会長だ。王会長は自身の古巣である巨人に松中獲得の打診を入れたとも目されていたが、いまのところ、そういった動きはない。
「高橋由伸新監督の弟分だった脇谷が巨人帰還を決めたため、左の代打をこれ以上抱えてもあぶれてしまう。巨人も世代交代を掲げているだけに、40歳を超えたベテランは獲得しにくい」(同)
打線強化なら、楽天と広島も考えられたが、両球団と松中を繋ぐ人脈はない。しかも、楽天は前広島の栗原を獲得。今後、松中獲得の可能性があるとしたら、王会長と繋がるDeNAの高田繁GMが浮かぶが、そういった動きは一切聞かれない。
ダイエー時代にホークスのフロントマンを務めていた瀬戸山隆三氏がオリックスの本部長に転じているが、こちらもそういった声は聞かれない。
一方で、井川はどうか。
「井川も引退危機と言っていい。井川をかわいがっていた岡田彰布氏がいまの阪神と話ができるのかどうか…。和田豊監督の時代に、井川をトレードで獲得しようと阪神が検討したのは本当です。その時点で井川の古巣帰還が叶わなかったということは、戦力としてダメだしをされたからでしょう」(球界関係者)
井川はもしかしたら今回、アメリカでの経験が生きるかもしれない。
「井川は米球界に在籍した時期も長いので、代理人に移籍先を探させる手段も心得ているはずです。米独立リーグでもいいと割り切れば、なんとかなるのでは」(同)
一方で、「松中のほうがなんとかなるのではないか」の声も聞かれた。ソフトバンク内部に松中の去就を心配する声があり、日増しに強くなっている。平成になってから唯一の三冠王であり、このまま去就が決まらなければ、「その功績に相応しいフィナーレの場を用意すべき」だという。
「FA、トレード、外国人選手の獲得などチームの補強が終わるのは12月半ば。この時点で松中のもとにオファーがなければ、ソフトバンクが『もう一度話し合いたい』と連絡をすると聞いているが」(同)
現役を引退した選手のほとんどがセカンドキャリアで悩む。一流の選手になればなるほど、自身の引き際が難しいというわけか…。