ネットでは、
「平均点以下を集めるビジネスモデルのほうが長い目でみたら勝ちってことか」
「モーニング娘は10年持った。ヒット曲あるの?」
等の皮肉たっぷりの意見が目立った。
AKB48は現在100人程度いるが、運営側による<研究生セレクション>という審査で落選すると、強制脱退が決まる。いっぽういわば一軍のメンバー48人に、その制度は適用されない。以上を踏まえたうえで、彼の真意はさまざまなメディア発言から理解可能だ。
結論から言うと、秋元氏は、かつて“素人”をテレビに出していたが、今は“素人を頑張らせてプロ化させた一部”をテレビに出している、という点が違う。
産経新聞のインタビューによると、秋元は「宝塚歌劇団のようになればいい。アイドルとは関係ない作曲家や小説家などにも育ってくれたりすればいいし、AKBに入って夢をかなえてほしい」と語っている。『自分は違うなと思ったらやり直して、また次の場所で全力で走ればいいんです』(秋元)という存在なのだそうだ。
いずれにせよ、上澄みの40数人を含め、単なるアイドルグループではない。秋元氏にとって、アイドルの質でモー娘。に勝っている、などとは一言も言っていないわけだ。
この発言は、AKB運営による6月12日の<研究生セレクション>で落選し強制脱退が決まった子のひとりが引退コメントで語った『私にはアイドルは向いてなかったのかもしれません。悔しいですが、私は夢も目標もあるのでそれに向かって頑張ります。また、別の所でみなさんに会いたいと思っています』という言葉と寸分違わず一緒である。彼女は、たぶん広義には芸能界を引退したわけではない。また、このような解雇からの復活例もあるという。
秋元は、相手のビジネスとの比較で、まさにこのような自分のビジネスモデルの優越性を主張したかった、というのが言外にありそうだ…。
いっぽう、同・新聞インタビューでは、AKB48が幾つかの公演をすでに成功させた海外進出について言及。
「“なんだこれは”と思わせることが大事。納豆(=日本製アイドル)を、アメリカ向けに変える必要はない。納豆のままでいい。」
今後の海外展開についても、<北風と太陽>の話を引き合いに出し、「ただ単に日本人の劇場型アイドルとして存在していればいい、そうすれば自然と海外から引く手が来る」、そう語るのだ。いろいろ難しいにせよ、それにしてもなんとも消極的な作戦詳細である。
結局秋元氏のもうひとつの特徴は、このように、それ以上は考えない、ということである。その、鋭いのか…? うーん、なんだかなあ、と思わせる感じ。
夢を実現する場というコンセプトを御旗にするが、同時にそれ以上の作戦もなし。結局、2万円のものを売るなど、アイドルビジネスでボロ儲けの余地は相当残すので、それが理解の外というネットユーザー、否、一般の人から、反発を受けるわけだ。
秋元氏については周知のとおり、「芸能プロ関係に人望はなく、スポンサーは独力で見つけている」(実話誌編集者)という噂がかまびすしい。型にハマらないのが成功の極意、というところか。
−−つんく♂とのタイアップは?
という新聞記者の質問には、「ぼくはやりたいと思っています。難しいでしょうが。」という発言で締めた秋元氏。おいしい話をむげに否定したりはしない。その点は、AKB48の中途半端な存在感とは違い、クリアだ。
モー娘。とはシステムの違うAKB48であるが、常に現実や敵味方の別に関係なく“最善手”を探している秋元氏のこと、急転直下、平成の大合併、2大アイドルグループのコラボへ向けて、動かないとも言い切れないか。
(※「」内発言は、要約。本表記法を社内基準とする出版社もある。)