内藤は昨年12月に4度目の防衛に成功。その後、V5戦に意欲を示していたものの、開催時期は未定のままだった。
この日の会見で内藤陣営は一部報道であった次期防衛戦について、中国で行うことを正式発表。今回は初のアウェーでの防衛戦となるが、「敵地に乗り込んで思いっ切り持てる力を出したい。逃げ腰にならずに打ち合っていきたい」と3戦連続のKO勝利を誓った。
挑戦者の熊は「小タイソン」の異名を持ち、屈強な上半身から繰り出す強烈なパンチと軽快なフットワークが武器の中国ナンバーワンボクサー。12勝中8KOと強打を誇る相手にスタミナで相手を負かすべく、現在はロードワークや坂道、階段ダッシュなど基礎体力強化中心のメニューをこなしている。
「(トレーナーの)野木さんがまた新しい階段を見つけちゃって…。僕は走るの大嫌いなのに。(以前は)15本から20本だったのが、最近は25本に増えた。毎日、吐きそう」。グチをこぼしながら取り組んでいる。
約1カ月後に迫った防衛戦に向け着々と準備を進める内藤だが、気がかりなことがある。左目の異変だ。
報道陣から左目が充血していることを問われ「スパーリングをやっていたら、結膜炎になっちゃったんですよ。気づいたら真っ赤」と明かした。
もちろん試合までには完治することは間違いない。だが、ただの結膜炎と侮れない。宮田会長が怒り心頭なのだ。
「(結膜炎になっているなんて)知らなかったですよ。みんなにうつると迷惑がかかるし、しばらく(ジムに)出入り禁止にしようかと思います。いつも私が一番の被害者(最後は自分にうつる)なんです」と“隔離”する考えを明かした。
今回はタイトルマッチまで時間も限られており、通常であれば200〜250ラウンドをこなすスパーリングも減少せざるを得ないという。
世界王者を襲った突然のアクシデント。今後は出げい古も予定しているというが、調整に影響を及ぼしかねない事態だ。V5戦に黄信号が灯った?
◎V5戦中国開催の裏にある思惑
今回、内藤の防衛戦が中国で行われる背景には、WBCの中国進出という戦略が見え隠れする。
WBCは昨年11月に中国・成都で総会を開き、内藤が期間内に指名試合をこなしていないという理由から4度目の防衛成功後、2試合連続での指名試合を義務づけていた。
本来であれば、V5戦はWBCが指名した選手と対戦しなければならない。
だが、宮田会長は今回の防衛戦について「WBCからの連絡は届いていません」と説明した。
WBCは総会を中国で開くなど、マーケット拡大に力を注いでいる。そのためフライ級で世界ランキング入りしている熊に白羽の矢が立ち、内藤は指名試合を回避できた。
今回のタイトル戦は、WBCと内藤陣営の思惑が一致したための特例に過ぎない。内藤が防衛にV5を達成すれば次こそは指名試合が待っている。
次期挑戦者候補として有力視されるのは、同級1位のポノムルングレック、4月24日に行われる同級2位のミランダVS同級3位のポンサクレック暫定王座戦の勝者。いずれも難敵だ。
なお、当日はOPBF女子東洋太平洋スーパーフェザー級初代王座決定戦、同級3位、水谷智佳VS4位、楊瑩(ヨウギョクエイ)、ABCO(WBCアジア)スーパーフェザー級タイトルマッチ、王者・夏欽(カギョクキン)VS梶川悠も決定した。