同社はプロ野球、横浜DeNAベイスターズのオーナー会社である。といっても球団が海外から超大物を一本釣りしたわけでもなければ、3月末で廃部となるエスビー食品陸上部を引き取るに当たって朗報が舞い込んだわけでもない。実は1月11日、ソニーが関東財務局に株式の大量保有報告書を提出。突如として発行済み株式の11.75%を保有する第2位の株主に躍り出たことが明らかになったのである。株価フィーバーは、これを受けてのことだった。
「ソニーは去年、インターネット子会社のソネットエンタテインメントにTOBを行って完全子会社に組み込んだ。ソネットはプロバイダーの一方で投資会社の顔を持ち、医療サイトのエムスリーに55.9%を出資する筆頭株主、DeNAは第2位の大株主だった。そのため現物配当の形になって、両社の名義がソニーに切り替わったのです。投資家は、多角化経営に乗り出したソニーが、DeNAの株を買い増して経営のグリップを握るのではないかとの期待を膨らませた。これがフィーバーの真相です」(市場関係者)
DeNAの筆頭株主は創業者で取締役でもある南場智子女史の13.09%。ソニーが市場で買い増せば、筆頭株主に躍り出るのはそう難しい話ではない。それどころか今回、第2位株主に躍り出たことについて、ソニーは「今後のグループ全体の戦略に照らして適宜判断する」と、株の買い増しとも売却とも取れる含みあるコメントを発表している。市場関係者が続ける。
「ソニーは主力のエレクトロニクスが依然として赤字に苦しんでおり、電機への深入りは避けたいのが本音。そうである以上、平井一夫社長は611億円を投じてソネットにTOBを仕掛けた時点で、エムスリーとDeNAの扱いを決めていたに違いありません。むしろ一石二鳥ならぬ、一石三鳥を狙った野心的TOBだったと読むのが自然でしょう」
ソニーはこの3月期、早々と赤字幅拡大を表明しているパナソニックやシャープを尻目に、200億円の最終黒字(前期は4563億円の赤字)を予想している。しかし、テレビ事業の9期連続営業赤字が避けられないことから「好調な金融や映画、音楽がエレキの不振をどこまで補えるか。それでも最終黒字の達成は極めて厳しい」(証券アナリスト)のが実情。すなわち、今やソニーは韓国勢に席巻されている電機事業との心中を回避するためならば、もう手段をウンヌンしている場合ではないほど追い込まれているのだ。