ところが日光、那須あたりの地元住民の表情がいま一つさえない。その理由は、どうやら放射性廃棄物の最終処分を巡って、疑心暗鬼にかられているというのだ。
栃木県那須町といえば那須御用邸があることで知られている。先頃の連休中もご静養のため、皇太子ご夫妻と長女の愛子さまが向かわれた。このあたりは日光国立公園に指定され、今の季節は芽吹きはじめたミズナラなどの木立の中をさわやかな風がわたり、まさに新緑のシーズンを迎えている。
地元住民が困惑しているのは、那須御用邸のお膝下ともいうべき那須高原に、放射性廃棄物の最終処分場が建設される計画が持ち上がっているからだ。
横光克彦環境副大臣が4月18日、福田富一栃木県知事に対し、福島第一原発事故の影響で栃木県内に発生した放射性セシウム濃度1キログラムあたり8000ベクレル以上の指定廃棄物(焼却灰や下水汚泥など)について、栃木県内の国有地に処分場を建設して処分するとの方針を伝え、福田知事がこれを了承した。
これは昨年8月に公布され、今年1月1日に施行された「放射性物質汚染対処特別措置法」に基づくもので、国の責任において最終処理することを定めている。ただし、指定廃棄物の処理は排出された当該都道府県内で行うこと、既存の処理施設での処理が困難な場合は、国有地を最終処分場の候補地として選定するなどとしている。そのため環境省は、7月から9月までに建設候補地の選定を決定するとしているのだ。
那須町在住の市民グループの一人が語る。
「東北、関東8県104市町村のうち、年間5ミリシーベルトを上回るのは福島県や宮城県の一部。除染に対する国の費用負担について私ら近所の民家は、壁面や雨どいの掃除、庭木の剪定、除草などに限って認められていますが、庭の表土除去や屋根の高圧洗浄などの作業は対象外になっています。たとえ少ない量だとしても、放射性物質はやはり行政の責任で速やかに処分してもらいたい。現在、比較的シーベルトの低い農地の表土などは袋に入れて敷地の穴の中に一時保管していますが、低いからといって不安が消えることはありません」
このような経緯があるだけに、放射性廃棄物の最終処分場の行方には大きな注目が集まっているという。